14:00 〜 14:15
[HCG26-02] 急速に強まる金融の気候変動への適応と気候関連リスク分析手法の検証
キーワード:気候関連リスク、TCFD、NGFS
気候変動の影響により、異常気象や気象災害が激甚化・頻発化している。気候変動によるリスクの増加に対する注目が集まり、金融業界や民間企業の対策へのニーズが高まってきた。気候変動への適応行動をしているのは、いまや政府や自治体だけでなく、企業や金融機関が積極的に動き出している。2017年に公表されたTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)宣言は、金融機関や事業会社が気候関連リスクを財務情報として開示することを求めており、日本国内では、世界最多の687の金融機関・事業会社が賛同を表明している(2022年1月末時点)。これらの適応行動は金融機関や事業会社が「気候変動対策はもはや社会貢献ではなく自己の存続のために必要」という認識が広まったためと言える(山崎ら, 2022)。
気候関連リスクを分析するための手法やツールが国際機関から複数発表され、実用化されている。スイス工科大学の研究グループなどが開発したCLIMADA、ケンブリッジ大学サステナビリティリーダーシップ機構で開発されたClimateWiseなどが代表的である。しかしこの数年の急速な情報開示要請のため研究開発が追いついておらず、情報開示の手法が統一されていないなど、様々な課題が浮き彫りとなっている。日本の金融庁や日本銀行も気候関連リスク評価を急いでいるものの、十分な知見やデータがないために難しい判断を迫られている。本研究の目的は、気候関連リスクの分析に用いられているリスクごとの気候シナリオを検証してその課題を整理し、気候科学研究のこれまでの成果と金融から求められている情報・データとのギャップを明らかにすることである。研究手法として、金融機関や事業会社への聞き取りと文献調査を行い、気候リスク分析ツールCLIMADAを定量的に検証した。
これまでの文献調査の結果、複数の国際機関が別々に気候シナリオを発表しており、シナリオの整合性や科学的妥当性が十分に検証されていないことが判った。言い換えれば、様々な気候関連リスクは、別々の方法論と異なる測定基準で独立して評価されている。特に、移行リスクと物理リスクの温室効果ガス排出経路が異なるために、気候関連リスクの統合評価は未だ困難である。今後さらに研究を進め、CLIMADAの検証結果や金融機関・民間事業者へのヒアリングから得られた知見も発表する予定である。
気候関連リスクを分析するための手法やツールが国際機関から複数発表され、実用化されている。スイス工科大学の研究グループなどが開発したCLIMADA、ケンブリッジ大学サステナビリティリーダーシップ機構で開発されたClimateWiseなどが代表的である。しかしこの数年の急速な情報開示要請のため研究開発が追いついておらず、情報開示の手法が統一されていないなど、様々な課題が浮き彫りとなっている。日本の金融庁や日本銀行も気候関連リスク評価を急いでいるものの、十分な知見やデータがないために難しい判断を迫られている。本研究の目的は、気候関連リスクの分析に用いられているリスクごとの気候シナリオを検証してその課題を整理し、気候科学研究のこれまでの成果と金融から求められている情報・データとのギャップを明らかにすることである。研究手法として、金融機関や事業会社への聞き取りと文献調査を行い、気候リスク分析ツールCLIMADAを定量的に検証した。
これまでの文献調査の結果、複数の国際機関が別々に気候シナリオを発表しており、シナリオの整合性や科学的妥当性が十分に検証されていないことが判った。言い換えれば、様々な気候関連リスクは、別々の方法論と異なる測定基準で独立して評価されている。特に、移行リスクと物理リスクの温室効果ガス排出経路が異なるために、気候関連リスクの統合評価は未だ困難である。今後さらに研究を進め、CLIMADAの検証結果や金融機関・民間事業者へのヒアリングから得られた知見も発表する予定である。