11:00 〜 13:00
[HCG27-P03] 九州南部豪雨災害時のソーシャルメディアの利活用
キーワード:豪雨災害、ソーシャルメディア、ツイッター
近年では世界各地で,地震災害だけではなく,火山噴火,台風や局所的豪雨などの気象災害の発災頻度も増え,自然災害対策が最重要課題になっている.防災・減災対策としての「自助」「共助・互助」「公助」のうち,最も基本となるのは個人による対策の「自助」である.災害発生時には消防隊等の救助の手が全被災者にすぐに届くわけではなく,災害対策により被害を最小限に抑えるためには,一人一人が日常生活において防災意識を高く持つことが必要となる.そのため,行政が災害情報を適切に広く提供するとともに,常日頃から災害発生時には危険な場所,避難場所等を的確に把握し,位置情報付きの災害情報として蓄積することにより,行政の「知らせる力」と住民の「知る力」の両方を高めることが重要である.これを「共助」「公助」へとつなげるためには,平常時から住民,企業,自治体等の地域社会の関係主体間での災害情報の十分な蓄積・共有が必要である.
一方,近年のわが国では,様々な情報ツールからインターネットにつながることができるクラウド・コンピューティング社会が形成されるとともに,様々なものがインターネットに接続されるIoT(Internet of Things),IoE(Internet of Everything)の時代になった.このようなわが国の現状を受けて,最新の第5期科学技術基本計画(2016年1月閣議決定)では第一の柱として世界に先駆けた「超スマート社会」の実現が明確に打ち立てられ,この実現に向けた一連の取り組みが「Society5.0」であるとされている.上記の社会ではInformation and Communication Technology(ICT)の効果的な利用によって,科学的知見に基づく「専門知」と住民の経験が生み出す「経験知」から構成される地域知としての災害情報の効率的な収集・蓄積が可能である.
以上の背景に基づき,地域知としての災害情報の利活用を図るために,本稿の著者の研究室では地域社会との連携により,平常時から災害発生時における減災対策のための災害情報システムを開発し,東京都三鷹市において2014年度から運用している.さらに時空間情報システムも開発し,重要な機能の1つのソーシャルメディアマッピング機能では,位置情報付きのソーシャルメディア上の投稿情報をデジタル地図上に集約化し,災害時におけるこれらの情報の利活用の可能性を示してきた.そこで本稿では,九州南部豪雨災害(2020年)におけるソーシャルメディアの利活用の事例を特に参照し,災害対応においてICTが重要な役割を今後担っていくために必要な事項について論じる.
わが国のような超スマート社会では,現実空間と仮想空間が密接に関わりあって融合しているため,これ2つの空間での事象が日常的に相互に影響し合っている.そのため現実空間で災害が発生すると,仮想空間でもほぼ同時期に,マスメディア,ソーシャルメディアの両方を含む多様な情報通信手段を用いて災害関連情報の送受信が開始されている.このことが避難,救助,支援などの実際の活動につながることもあるが,情報過多,これに伴う混乱などの問題を生じさせる可能性もある.そのため,仮想空間で送受信される情報,特にソーシャルメディア上の情報を実際の救助や支援にどのように効率的かつ効果的に役立てることができるのかが課題となる.
このような課題に対応するために,ソーシャルメディアの利活用のルールを作成するだけではなく,被災地の行政や救助・支援活動をされる方々に対して,被災地外等において必要不可欠な情報を取捨選択して伝える役割が必要となりうる.このような時には,著者の研究室が開発した時空間情報システムのソーシャルメディアマッピング機能を用いると,必要不可欠な情報をデジタル地図上に効率的に集約化して伝えることができる.このシステムは著者の研究室のウェブサイトにリンクしており,利用者登録制ではあるが無料で用いることができる.また本稿ではTwitterのみを対象として,災害時の利活用のルールを提案したが,他のソーシャルメディアも対象としてそれぞれの特徴を考慮したルールを提案することが必要とされる.
また,災害弱者≒情報弱者とならないように,ICTだけではなく口頭での呼びかけなども含む多様な情報伝達手段が必要とされる.災害時には「自分は大丈夫」という正常性バイアスが働き,迅速な避難が実現できないことがあるが,このような場合にはICTを効果的に用いて人々の避難行動を促すことも課題となりうる.ICTを使い慣れていない人々にとっては,まずは日常生活における利活用,ウェブ上のハザードマップの閲覧などから,ICTに親しむことが一助になりうるのではないだろうか.
一方,近年のわが国では,様々な情報ツールからインターネットにつながることができるクラウド・コンピューティング社会が形成されるとともに,様々なものがインターネットに接続されるIoT(Internet of Things),IoE(Internet of Everything)の時代になった.このようなわが国の現状を受けて,最新の第5期科学技術基本計画(2016年1月閣議決定)では第一の柱として世界に先駆けた「超スマート社会」の実現が明確に打ち立てられ,この実現に向けた一連の取り組みが「Society5.0」であるとされている.上記の社会ではInformation and Communication Technology(ICT)の効果的な利用によって,科学的知見に基づく「専門知」と住民の経験が生み出す「経験知」から構成される地域知としての災害情報の効率的な収集・蓄積が可能である.
以上の背景に基づき,地域知としての災害情報の利活用を図るために,本稿の著者の研究室では地域社会との連携により,平常時から災害発生時における減災対策のための災害情報システムを開発し,東京都三鷹市において2014年度から運用している.さらに時空間情報システムも開発し,重要な機能の1つのソーシャルメディアマッピング機能では,位置情報付きのソーシャルメディア上の投稿情報をデジタル地図上に集約化し,災害時におけるこれらの情報の利活用の可能性を示してきた.そこで本稿では,九州南部豪雨災害(2020年)におけるソーシャルメディアの利活用の事例を特に参照し,災害対応においてICTが重要な役割を今後担っていくために必要な事項について論じる.
わが国のような超スマート社会では,現実空間と仮想空間が密接に関わりあって融合しているため,これ2つの空間での事象が日常的に相互に影響し合っている.そのため現実空間で災害が発生すると,仮想空間でもほぼ同時期に,マスメディア,ソーシャルメディアの両方を含む多様な情報通信手段を用いて災害関連情報の送受信が開始されている.このことが避難,救助,支援などの実際の活動につながることもあるが,情報過多,これに伴う混乱などの問題を生じさせる可能性もある.そのため,仮想空間で送受信される情報,特にソーシャルメディア上の情報を実際の救助や支援にどのように効率的かつ効果的に役立てることができるのかが課題となる.
このような課題に対応するために,ソーシャルメディアの利活用のルールを作成するだけではなく,被災地の行政や救助・支援活動をされる方々に対して,被災地外等において必要不可欠な情報を取捨選択して伝える役割が必要となりうる.このような時には,著者の研究室が開発した時空間情報システムのソーシャルメディアマッピング機能を用いると,必要不可欠な情報をデジタル地図上に効率的に集約化して伝えることができる.このシステムは著者の研究室のウェブサイトにリンクしており,利用者登録制ではあるが無料で用いることができる.また本稿ではTwitterのみを対象として,災害時の利活用のルールを提案したが,他のソーシャルメディアも対象としてそれぞれの特徴を考慮したルールを提案することが必要とされる.
また,災害弱者≒情報弱者とならないように,ICTだけではなく口頭での呼びかけなども含む多様な情報伝達手段が必要とされる.災害時には「自分は大丈夫」という正常性バイアスが働き,迅速な避難が実現できないことがあるが,このような場合にはICTを効果的に用いて人々の避難行動を促すことも課題となりうる.ICTを使い慣れていない人々にとっては,まずは日常生活における利活用,ウェブ上のハザードマップの閲覧などから,ICTに親しむことが一助になりうるのではないだろうか.