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[HDS09-04] リアルタイム液状化被害推定システムの試作および推定精度の検証
キーワード:液状化、被害推定、リアルタイム、システム開発、マルチハザード
地震発生直後に被害を推定するリアルタイム被害推定システム(Fujiwara et.al, 2019)は,災害対応を迅速に行う上で有効であるが,現行では揺れによる被害のみを対象としている.一方,地震に伴う被害としては液状化や地すべり等もあり,我々はこれらを対象とした被害推定システムの開発に着手している.既報(内藤ほか,2021)では先名ほか(2018)の手法に基づき液状化発生確率を予測するシステムを開発したが,推定結果が過小評価になる場合があることやリアルタイム性等の課題があった.従って,本報では先名ほか(2021)の液状化推定手法を新たに導入して推定精度向上を図り,かつリアルタイム性を向上させたシステムを試作した.
本システムはリアルタイム被害推定システムから250mメッシュ最大速度分布を自動取得し,先名ほか(2021)により提案されている微地形区分グループ,および最大速度を用いた液状化発生確率の予測式を用いて液状化発生確率分布を推定するとともに,これにメッシュ内の液状化面積割合である液状化面積率を乗じた液状化危険率を算出する.また,人口データ・建物データを使用し,液状化曝露人口分布・液状化曝露建物分布を250mメッシュおよび市区町村単位で算出する.さらに,清水ほか(2016)の手法に基づき液状化による建物全壊棟数を250mメッシュおよび市区町村単位で算出し,液状化によるリスクを試算する.これらの推定結果はWebシステムとして可視化される.
本システムの推定精度検証を目的として,2016年熊本地震,2016年鳥取県中部地震,2018年北海道胆振東部地震を対象に,J-SHIS Labsで公開されている液状化発生メッシュと,本システムによって推定された液状化発生確率との比較を行った.ここで,前者は航空写真の判読結果に基づきメッシュ内に1カ所でも噴砂等の液状化の痕跡が確認されたことを示し,後者はメッシュ内に1カ所でも液状化が発生する確率を表すことから,両者は定義上等しい.対象領域をより大きい10kmメッシュで区切り,各領域内の液状化発生メッシュの比率を液状化発生確率(実測値)とみなし,本システムにおける10kmメッシュ毎の液状化発生確率の平均値(予測値)との比較を行った.
熊本地震を例とし,本システムによる推定結果および液状化発生メッシュを10km毎に集計し,実測値(Fig.1)と本発表における予測値(Fig.2),既報における予測値(Fig.3)を比較すると,既報では過小評価であった予測値が本発表では実測値に近づいていることが分かる.定量的な比較のため,液状化発生確率1%を閾値にメッシュ毎の正答率を算出したところ,既報では74%であったのに対し,本発表では82%に向上した.また,胆振東部地震では正答率87%,鳥取県中部地震では正答率94%となり,いずれも比較的高い予測精度を確認することができた.
なお,本システムのプロトタイプは内部向けに稼働を開始しており,例えば2022年1月22日1:08頃に発生した日向灘地震では大分県西大分地区において高い液状化発生確率を予測しており(Fig.4),報道等における現地被害の状況と一致している.
今後はより多くの地震を対象とした実被害との検証を進めるとともに,地すべり等のマルチハザードを融合したシステム開発を進めていきたい.
(参考文献)
Fujiwara, H., Nakamura, H., Senna, S., Otani, H., Tomii, N., Ohtake, K., Mori, T., and Kataoka, S.: Development of a Real-Time Damage Estimation System, Journal of Disaster Research, Vol.14, No.2, 2019.
内藤昌平, 中村洋光, 先名重樹, 岩波良典:リアルタイム液状化被害推定システム開発に向けた基礎的検討,日本地球惑星科学連合大会,SSS11-P14,2021.
先名重樹,松岡昌志,若松和寿江,翠川三郎:液状化発生におよぼす強震動の継続時間と地域性の影響,日本地震工学会論文集,Vol.18,No.2,2018.
先名重樹,小澤京子,杉本純也:近年の地震に液状化地点情報に基づく液状化危険率推定式の提案,日本地震工学会論文集,Vol.21,No.2,2021.
清水智,若浦雅嗣,小丸安史,藤原広行,中村洋光,森川信之,早川讓:地域における地震災害の類型化手法の検討,日本地震工学会論文集,Vol.16,No.3,2016.
J-SHIS Labs: https://www.j-shis.bosai.go.jp/labs/liqmap/
本システムはリアルタイム被害推定システムから250mメッシュ最大速度分布を自動取得し,先名ほか(2021)により提案されている微地形区分グループ,および最大速度を用いた液状化発生確率の予測式を用いて液状化発生確率分布を推定するとともに,これにメッシュ内の液状化面積割合である液状化面積率を乗じた液状化危険率を算出する.また,人口データ・建物データを使用し,液状化曝露人口分布・液状化曝露建物分布を250mメッシュおよび市区町村単位で算出する.さらに,清水ほか(2016)の手法に基づき液状化による建物全壊棟数を250mメッシュおよび市区町村単位で算出し,液状化によるリスクを試算する.これらの推定結果はWebシステムとして可視化される.
本システムの推定精度検証を目的として,2016年熊本地震,2016年鳥取県中部地震,2018年北海道胆振東部地震を対象に,J-SHIS Labsで公開されている液状化発生メッシュと,本システムによって推定された液状化発生確率との比較を行った.ここで,前者は航空写真の判読結果に基づきメッシュ内に1カ所でも噴砂等の液状化の痕跡が確認されたことを示し,後者はメッシュ内に1カ所でも液状化が発生する確率を表すことから,両者は定義上等しい.対象領域をより大きい10kmメッシュで区切り,各領域内の液状化発生メッシュの比率を液状化発生確率(実測値)とみなし,本システムにおける10kmメッシュ毎の液状化発生確率の平均値(予測値)との比較を行った.
熊本地震を例とし,本システムによる推定結果および液状化発生メッシュを10km毎に集計し,実測値(Fig.1)と本発表における予測値(Fig.2),既報における予測値(Fig.3)を比較すると,既報では過小評価であった予測値が本発表では実測値に近づいていることが分かる.定量的な比較のため,液状化発生確率1%を閾値にメッシュ毎の正答率を算出したところ,既報では74%であったのに対し,本発表では82%に向上した.また,胆振東部地震では正答率87%,鳥取県中部地震では正答率94%となり,いずれも比較的高い予測精度を確認することができた.
なお,本システムのプロトタイプは内部向けに稼働を開始しており,例えば2022年1月22日1:08頃に発生した日向灘地震では大分県西大分地区において高い液状化発生確率を予測しており(Fig.4),報道等における現地被害の状況と一致している.
今後はより多くの地震を対象とした実被害との検証を進めるとともに,地すべり等のマルチハザードを融合したシステム開発を進めていきたい.
(参考文献)
Fujiwara, H., Nakamura, H., Senna, S., Otani, H., Tomii, N., Ohtake, K., Mori, T., and Kataoka, S.: Development of a Real-Time Damage Estimation System, Journal of Disaster Research, Vol.14, No.2, 2019.
内藤昌平, 中村洋光, 先名重樹, 岩波良典:リアルタイム液状化被害推定システム開発に向けた基礎的検討,日本地球惑星科学連合大会,SSS11-P14,2021.
先名重樹,松岡昌志,若松和寿江,翠川三郎:液状化発生におよぼす強震動の継続時間と地域性の影響,日本地震工学会論文集,Vol.18,No.2,2018.
先名重樹,小澤京子,杉本純也:近年の地震に液状化地点情報に基づく液状化危険率推定式の提案,日本地震工学会論文集,Vol.21,No.2,2021.
清水智,若浦雅嗣,小丸安史,藤原広行,中村洋光,森川信之,早川讓:地域における地震災害の類型化手法の検討,日本地震工学会論文集,Vol.16,No.3,2016.
J-SHIS Labs: https://www.j-shis.bosai.go.jp/labs/liqmap/