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[HDS09-06] 平成30年7月豪雨により芸予諸島大三島で発生した造成農地斜面の崩壊とその要因
キーワード:降雨による斜面崩壊、造成農地、盛土斜面、土地利用の変遷
2018年(平成30年)6月28日から7月8日にかけて台風通過や梅雨前線の発達の影響により、中国・四国地方の広い範囲で記録的な大雨となった。この大雨に伴う土砂災害としては広島県呉市周辺の被害が特に甚大であったが、瀬戸内海の島嶼部でも多数の土砂災害が発生している。本発表では、その一例として芸予諸島大三島で発生した斜面崩壊を報告する。大三島では島全体で数百箇所に及ぶ斜面崩壊が発生したが、土石流化した大規模な崩壊は島中央部の上浦町井口地区と甘崎地区に集中していた。同2地区では1970年代初めに果樹園地の面積拡大を目的とする農地造成が行われており、それ以前は農地利用がされていなかった源頭部の谷頭凹地を整形して複数の人工斜面が造られた。豪雨による斜面崩壊の滑落崖は人工斜面の盛土部分に位置しており、盛土材料の不安定化が崩壊発生の主因であったとみられる。今回の豪雨で斜面崩壊が発生しなかったところにも同様の人工斜面が分布していることから、今後の災害リスクを検討するために、盛土の厚さや広がりなどの人工斜面の形状を詳しく調査することが重要になる。近年の離農や農地管理放棄の加速は、こうした農地造成盛土の存在をますます見えにくくしており、将来の災害リスクとして見落とされる恐れがある。旧版地図や空中写真などのアーカイブデータを活用して、土地利用変遷を可視化していく取り組みが求められる。