日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS09] 人間環境と災害リスク

2022年5月22日(日) 10:45 〜 12:15 203 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:佐藤 浩(日本大学文理学部)、コンビーナ:中埜 貴元(国土交通省国土地理院)、座長:佐藤 浩(日本大学文理学部)

10:45 〜 11:00

[HDS09-07] 与那国島海食崖の崩壊リスク
―高解像度三次元計測に基づく地形解析ー

*木村 颯1菅 浩伸1 (1.九州大学大学院地球社会統合科学府)

キーワード:RTK-UAV、SfM-MVS、DEM、八重山層群、琉球層群、海食洞

海食崖の周辺に建設された建造物や道路は,海食崖が後退することで崩壊する恐れがある.海食崖の侵食は地質や岩質,波浪条件などの様々な条件に影響を受けるため,その崩壊リスクを評価するためには複数地域での比較研究が重要となる.本研究では,与那国島の異なる地質・岩質をもつ地域における海食崖地形の違いに着目して高解像度三次元計測を行ない,その崩壊リスクについて検討した.この地域の海食崖を構成する地質は,中新統の砂岩泥岩互層(八重山層群)と更新統の礁成石灰岩(琉球層群)である.

 地形測量として,RTK(Real Time Kinematic)-UAVを用いた写真測量を行なった.UAVはPhantom4 RTK(DJI社),SfM-MVS(Structure-from-Motion Multi-View Stereo)ソフトウェアはMetashape Professional(Agisoft社)を使用した.三次元モデルは空間解像度5 cm程度となるように作成した.地形解析にはGISソフトウェアであるQGIS,3DCADソフトウェアであるRhinoceros(McNeel社)を用いた.

 地形解析の結果,与那国島の海食崖は,岩相中の弱層が波浪を受けうる領域において選択的に侵食され,岩盤構造や弱層の層厚とその連続性によって形成される地形が変化することが分かった.また,単一の崩壊に関しては,崩壊形態とその規模が砂岩泥岩互層と石灰岩で異なることが崖下の崩壊礫の計測によって明らかになった.互層では砂岩層の厚さが崩落の規模を決定する上で重要であり,崩壊礫の形状も砂岩層の厚さと高角節理の配置によって板状から塊状まで変化していた.それに対し,石灰岩分布域では崩壊礫のほとんどが塊状であり,その規模は崖の比高が高くなるほど大きくなる傾向があった.また,石灰岩中の海食洞が発達する箇所では,道路の真下を横切って空洞が広がっており,局所的な陥没のリスクがあることが本研究の三次元的な測量により分かった.

 以上のように,地質と岩質は海食崖の崩壊とそれにより形成される地形に大きく影響を与えるため,現在の海食崖地形での解析・比較結果が蓄積されることで今後起こりうる崩壊やその危険性を把握することに繋がると考えられる.