日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS10] 津波とその予測

2022年6月2日(木) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (15) (Ch.15)

コンビーナ:室谷 智子(国立科学博物館)、コンビーナ:対馬 弘晃(気象庁気象研究所)、座長:行谷 佑一(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、室谷 智子(国立科学博物館)

11:00 〜 13:00

[HDS10-P07] 2020年7月および10月にアリューシャン海溝沿いで発生したM7.8とM7.6の地震の津波計算

*中澤 怜1 (1.徳島大学大学院創生科学研究科理工学専攻)

キーワード:津波計算、DART、アリューシャン海溝沿い

アリューシャン海溝では,太平洋プレートが北アメリカプレートの下に年間5〜7㎝の速度で沈み込んでおり,これに伴って多くの地震が発生している.2020年にはM7.8の地震発生から約3ヶ月後にM7.6の地震が発生した(マグニチュードはUSGSによる).ともにアラスカ半島で1m未満の津波が観測された.この2つの地震は,連動して発生した可能性があり,地震の連動発生を理解するうえで重要な手がかりが得られる可能性がある.本研究では,USGSによって求められた断層モデルを用いてM7.8の地震とM7.6の地震の津波計算を行い,DARTの観測波形と比較した.
USGSによって求められた断層モデルを用いて地殻変動を計算し,津波の初期水位を求めた.津波計算には津波ソフトウェアのJAGURSを用いて線形長波式を解いた.地形データはGEBCOをリサンプリングして格子間隔5分のデータを用いた.計算領域は,東経135°〜西経105°,北緯0°〜65°である.また,津波の計算時間は地震発生から10時間,時間ステップ幅は20秒,ライズタイムは60秒とした.M7.8の地震では13地点,M7.6の地震では5地点のDART観測点での波形と比較した.
M7.8の地震では波源の西側と東側に分けて津波波形の再現性について評価した.波源西側での観測点では,津波計算波形の最大振幅がDART観測波形のそれを概ね再現した.一方で,波源の東側においては津波計算波形がDART観測波形より大きかった.M7.6では,津波計算波形はDART観測波形に記録された大きな引き波を再現できなかった.この結果を受けて,海底斜面の水平変位による津波励起の効果,海水密度効果,津波の荷重による地球の弾性変形の効果を加味したうえで再度計算を行ったが,波形の再現性は改善しなかった.今後は,津波波形逆解析を行い,津波記録を再現できる断層モデルを推定する予定である.