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[HDS11-02] 福島県下郷町のスプレッド型地すべり:地溝埋積堆積物およびすべり面粘土の特徴
キーワード:スプレッド型地すべり、福島県、下郷町
福島県南会津郡下郷町の枝松地域には,スプレッド型地すべりの地形的特徴を備えた地すべりが認められる.加藤・小嶋(2022)の,本地すべりの地形地質の特徴に関する報告に引き続き,本報告では,ブロック化した地すべり移動体の間の地溝を埋積した堆積物の特徴と,地すべり末端で採取したすべり面粘土の特徴およびそこに含まれる植物遺体の放射性炭素同位体年代について報告する.地溝埋積堆積物を,ハンドオーガーボーリングにより地表から約3m掘削しコアを得た.堆積物は,火山性の泥,シルト,砂の層から成り,径数mmから数cmの白色の軽石を多数含む.地表から深度約50cmまでは擾乱された耕作土から成る.極細粒砂サイズの粒子の検鏡結果より,含まれる粒子は,pumice, microlite-bearing, blocky, vesicularなどのタイプの火山ガラスと,石英,長石,角閃石,輝石などの鉱物粒子であることがわかった.これらの特徴は,調査地域の北西約40kmに位置する沼沢火山から紀元前3,400年頃に噴出した沼沢湖火砕物(山元,2003)に対比できる可能性が高い.鶴沼川沿いの地すべり移動体末端部では,すべり面を構成する下位の塑性変形したシルト層が絞り出され,上位の安山岩礫や現河床礫を取り込んでいる様子が観察される.同時に5628-5524 cal BC (93.25 %)の14C年代を示す植物遺体も含まれており,スプレッド型地すべりが少なくともこの年代には活動していたことが明らかとなった.すべり面を構成するシルト・粘土層には,XRD分析の結果smectiteが含まれていることがわかった.また,研磨片・薄片観察の結果,塑性変形したシルト岩は火山ガラスを多量に含む凝灰岩から成り,その中にジグソークラックをもつ脆性破壊した泥岩片を含むこと,2方向に発達する平行な黒色線構造を持つことなどが観察される.これらは,物性の異なるシルト泥互層が,スプレッド型地すべりの活動にともなって変形した結果,形成された構造と推定される.