日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS11] 湿潤変動帯の地質災害とその前兆

2022年5月23日(月) 15:30 〜 17:00 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:小嶋 智(岐阜大学工学部社会基盤工学科)、コンビーナ:内田 太郎(筑波大学)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、座長:内田 太郎(筑波大学)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、小嶋 智(岐阜大学工学部社会基盤工学科)

16:15 〜 16:30

[HDS11-10] 付加体堆積岩の大規模崩壊多発地における降雨流出特性の空間分布(その2)

*山川 陽祐1輿水 康二2内田 太郎1 (1.筑波大学生命環境系、2.筑波大学大学院理工情報生命学術院)

キーワード:降雨流出、付加体堆積岩、受け盤・流れ盤、大規模崩壊

降雨を外力とする斜面崩壊が選択的な箇所で発生するメカニズムの解明を進める上で,地盤条件と降雨-流出応答との関係性の理解は重要な課題である。付加体堆積岩山地においては,概して地質構造に支配された空間的に不均一な地中水挙動が卓越するとされているが,その実態は未解明な部分が多い。本研究では,静岡県の大井川上流域(井川湖周辺)において大井川本川に流入する17支流を対象として河川流量と水質(溶存化学成分)の計測を行い,付加体堆積岩山地における降雨流出特性の空間分布を地形・地質および地質構造を踏まえて検討した。河川流量は無降雨時の複数時期に計測した。大井川上流域の地質は四万十帯に分類される付加体で,大規模崩壊の多発域である(ここでは崩壊に比べて移動速度が小さい現象である地すべりも含む)。井川湖周辺では,主に泥岩~泥岩優勢砂岩泥岩互層,一部に砂岩が分布する。層理面は概ね北西方向に傾斜し,大井川本川の流下方向は概ね南~南西方向である。従って,検討対象とする支流群は,大局的には,大井川右岸側に位置するものは受け盤構造,左岸側に位置するものは流れ盤構造をもつ。この左岸側の支流群を構成する多くの斜面には滑落崖と緩勾配によって特徴づけられる地すべり地形が高密度に分布し,対照的に右岸側では地すべり地形がほとんど見られず地形勾配は相対的に大きい。各渓流水の水質は,CaSO4型とCa(HCO3) 2型とに二分され,泥岩の優勢度が大きい流域においてCaSO4型となる傾向が認められた。一方で,河川流量については,流れ盤斜面の割合と比流量の変動係数(複数時期のデータについて,標準偏差を平均値で除したもの)との間に正の相関が認められた。すなわち,比流量が,流れ盤斜面が優占する支流域ほど先行降雨量に敏感に応答し,反対に受け盤斜面が優占する支流域ほど鈍感に応答して,増減する傾向が示された。以上の結果から,本対象流域において,層理面の傾斜構造(受け盤・流れ盤構造)が降雨-流出応答特性を強くコントロールしている可能性が示された。
 本研究はJSPS科研費 JP19H02989, JP20H00434の助成を受けた。