日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS11] 湿潤変動帯の地質災害とその前兆

2022年5月31日(火) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (14) (Ch.14)

コンビーナ:小嶋 智(岐阜大学工学部社会基盤工学科)、コンビーナ:内田 太郎(筑波大学)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、座長:小嶋 智(岐阜大学工学部社会基盤工学科)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、内田 太郎(筑波大学)

11:00 〜 13:00

[HDS11-P02] 長野県南信州地域の河谷に分布する埋もれ木の年代と地変

*山田 隆二1、村松 武2苅谷 愛彦3木村 誇4佐藤 昌人1、寺岡 義治5 (1.国立研究開発法人 防災科学技術研究所、2.飯田市美術博物館、3.専修大学、4.愛媛大学、5.伊那谷自然友の会)

キーワード:埋もれ木、斜面崩壊、誘因、放射性炭素年代測定、酸素同位体比年輪年代測定

地震・豪雨に誘発された土砂流出や斜面崩壊などの地変に巻き込まれて枯死・埋没した樹木が、後年に埋もれ木として出土することがある。埋もれ木の年代測定に基づいて地変を復元するには、試料の産出状況や用いる測定手法自体の不確実度を踏まえた上で、推定枯死年の前後に発生した各事象を関連付けるところから始める必要がある。酸素同位体比年輪年代測定法など、近年特に精緻化した手法によって1年単位での年代決定がなされる場合には、例えば、誘因となる巨大地震の本震か、その前震・余震か、緩んだ斜面の土砂流出かなど、樹木が枯死した直接の原因を識別しなければならない。また、試料が少数である場合には、保存・採取状態による制約(最外年輪の存否など)により、特定の地変以外の要因で枯死した樹木個体の混入を判断できない。そのため、大規模な地変発生時に生じた樹木の一斉枯死のシグナルを多数の試料の年代値から特定することで、発生年代推定の確からしさを向上させることができる。さらに、一斉枯死した樹木の分布から地変の影響範囲を解明できる可能性がある。
本報告では、1900年代後半から多数の埋れ木が発見されている長野県南信州地域(例えば、寺岡ほか, 2006, 飯田市美術博物館)を対象に、以下の事例について年代測定データを収集整理する。埋もれ木の新たな年代測定値を含むデータベースを構築することで、樹木の枯死と地形イベントの発生との時間的な相関関係を年代データに基づいて再検討する。
(1)遠山川埋没林:河床低下に伴って飯田市大島から木沢にかけての遠山川沿いに出現した埋没林は、8世紀頃に発生した地震との対応が論じられる(例えば、寺岡ほか, 2006, 飯田市美術博物館)。
(2)池口川堰止湖:遠山川と合流する池口川で、遠山川埋没林と同時期に形成された堰止湖の地形と堆積物の調査に基づいて、この地域の地変が論じられる(村松ほか, 2009, 日本地質学会学術大会講演要旨, 330-330)。
(3)矢筈山くずれ:遠山川沿いの矢筈山北麓にある矢筈山くずれの上流約1200mの間で発見された10本ほどの埋もれ木は、この崩壊により形成された堰止湖に埋没したと考えられる(南アルプスジオパーク・エコパークサイトカード, 2015)。
(4)風越山断層:伊那谷断層帯の活動を検討する目的で、風越山断層に沿う小谷を埋積する崩壊堆積物から埋没樹木が採取された(奥村ほか, 1998, 名古屋大学加速器質量分析計業績報告書, 9, 64-75)。
(5)阿智・湯の洞沢/桑畑沢:阿智村の横川湯の洞沢と清内路桑畑沢の崩壊土砂から発見された埋もれ木の分析に基づいて、この地域の地変と天正地震との関係が論じられる(松島, 2000, 歴史地震, 16, 53-58)。
(6)川路・花御所:飯田市川路花御所の土取り現場で、約17000年前のものと考えられる埋没林が発見された(松島ほか, 1998, 飯田市美術館研究紀要8, 107-118)。