11:00 〜 13:00
[HDS12-P04] 恵那山−猿投山北断層帯におけるDD法による震源再決定
キーワード:恵那山–猿投山北断層帯、Double-Difference 法、断層構造
屏風山・恵那山断層帯及び猿投山北断層帯の長期評価(地震調査研究推進本部,2021)によると,恵那山−猿投山北断層帯で発生する地震の規模は,全体が1つの区間として活動する場合,マグニチュード7.7程度で,30年確率は最大2%と評価されている.この長期評価に基づく強震動予測の結果によると,震度6弱以上の揺れに見舞われる曝露人口は670万人程度となる可能性があり,社会・経済活動に非常に大きな被害を及ぼすことが予想される.また地震後経過率は0.4~1.1となり,最大値が1.0を上回っているため,本断層帯で発生する地震やそれによる強震動評価の再検討が早急に必要である.
恵那山−猿投山北断層帯は,東半部と西半部とで変位の主体となる方向が異なり,別々に活動した可能性も否定できないため,本断層帯について過去の活動履歴について信頼性を向上させる観点の調査が必要である.また,平均活動間隔の信頼度は低いと評価されており,活動間隔の信頼度を向上させる観点の調査も必要である.加えて,より高精度な強震動予測のために,地下深部における断層の分布状況・形状や当該地域の地下構造についても明らかにする必要がある.
このような背景を踏まえ,本研究では,地下深部における断層の分布状況を明らかにするため,猿投山北断層と恵那山断層の接合部付近(領域1),および恵那山断層がステップする場所(領域2)の2つの領域において発生した地震の相対震源分布をDouble-Difference(DD)法(Waldhauser and Ellsworth, 2000)を用いて高精度に決定し,地下深部における断層の分布状況・形状を推定した.解析期間は2002年6月3日〜2018年12月31日で,深さ20km以浅に発生したM0.2以上の地震516個を気象庁一元化震源リストから抽出した.DD法解析に先立って,地震波到達時刻の誤差を最小限にするために地震波波形の手動再験測を行った.DD法を適用する際の解析対象地震の選択基準として,8観測点以上で地震波の読み取りが可能であった地震に限定し,震源から観測点までの距離の制限は60km以内,隣接する震源のペアとして認めるペア間の距離は10km以内とした.領域1では,DD法を適用する際に最終的に解析対象となった地震数は436個で,使用した観測点数は36であった.また走時差ペア数はP波369745,S波409868の合計779613あった.領域2では,DD法を適用する際に最終的に解析対象となった地震数は76個で,観測点数は36であった.また走時差ペア数はP波15226,S波16393の合計31619であった.
DD法による解析の結果をもとに,2つの領域の地下深部の深さ10〜15kmに北東―南西走向の6つの微小な面構造が存在する事が明らかになった.その中でも2006年12月19日に発生したM4.4の地震とその余震を含む面構造は猿投山北断層上には存在せず,20万分の1地質図幅「豊橋及び伊良湖岬」(牧本・他,2004)並びに5万分の1地質図幅「明智」(山崎・他,2020)で存在が指摘されている断層の深部延長に位置していると考えられる.また,恵那山断層がステップする場所の地下深部に恵那山断層と走向・傾斜が一致する面構造が存在することや,別の場所に恵那山断層と共役な面構造が存在することも明らかになった.本研究で明らかになった面構造は,当該地域の強震動予測等の高度化に役立てられることが期待される.
謝辞:本研究は,文部科学省令和2年度科学技術基礎調査等委託事業「屏風山・恵那山断層帯及び猿投山断層帯(恵那山-猿投山北断層帯)における重点的な調査観測」の一環として実施されました.解析には防災科学技術研究所Hi-net(doi:10.17598/NIED.0003),気象庁,名古屋大学,京都大学防災研究所,産業技術総合研究所の観測波形データを使用しました.記して感謝致します.
恵那山−猿投山北断層帯は,東半部と西半部とで変位の主体となる方向が異なり,別々に活動した可能性も否定できないため,本断層帯について過去の活動履歴について信頼性を向上させる観点の調査が必要である.また,平均活動間隔の信頼度は低いと評価されており,活動間隔の信頼度を向上させる観点の調査も必要である.加えて,より高精度な強震動予測のために,地下深部における断層の分布状況・形状や当該地域の地下構造についても明らかにする必要がある.
このような背景を踏まえ,本研究では,地下深部における断層の分布状況を明らかにするため,猿投山北断層と恵那山断層の接合部付近(領域1),および恵那山断層がステップする場所(領域2)の2つの領域において発生した地震の相対震源分布をDouble-Difference(DD)法(Waldhauser and Ellsworth, 2000)を用いて高精度に決定し,地下深部における断層の分布状況・形状を推定した.解析期間は2002年6月3日〜2018年12月31日で,深さ20km以浅に発生したM0.2以上の地震516個を気象庁一元化震源リストから抽出した.DD法解析に先立って,地震波到達時刻の誤差を最小限にするために地震波波形の手動再験測を行った.DD法を適用する際の解析対象地震の選択基準として,8観測点以上で地震波の読み取りが可能であった地震に限定し,震源から観測点までの距離の制限は60km以内,隣接する震源のペアとして認めるペア間の距離は10km以内とした.領域1では,DD法を適用する際に最終的に解析対象となった地震数は436個で,使用した観測点数は36であった.また走時差ペア数はP波369745,S波409868の合計779613あった.領域2では,DD法を適用する際に最終的に解析対象となった地震数は76個で,観測点数は36であった.また走時差ペア数はP波15226,S波16393の合計31619であった.
DD法による解析の結果をもとに,2つの領域の地下深部の深さ10〜15kmに北東―南西走向の6つの微小な面構造が存在する事が明らかになった.その中でも2006年12月19日に発生したM4.4の地震とその余震を含む面構造は猿投山北断層上には存在せず,20万分の1地質図幅「豊橋及び伊良湖岬」(牧本・他,2004)並びに5万分の1地質図幅「明智」(山崎・他,2020)で存在が指摘されている断層の深部延長に位置していると考えられる.また,恵那山断層がステップする場所の地下深部に恵那山断層と走向・傾斜が一致する面構造が存在することや,別の場所に恵那山断層と共役な面構造が存在することも明らかになった.本研究で明らかになった面構造は,当該地域の強震動予測等の高度化に役立てられることが期待される.
謝辞:本研究は,文部科学省令和2年度科学技術基礎調査等委託事業「屏風山・恵那山断層帯及び猿投山断層帯(恵那山-猿投山北断層帯)における重点的な調査観測」の一環として実施されました.解析には防災科学技術研究所Hi-net(doi:10.17598/NIED.0003),気象庁,名古屋大学,京都大学防災研究所,産業技術総合研究所の観測波形データを使用しました.記して感謝致します.