日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM03] 地形

2022年5月23日(月) 09:00 〜 10:30 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:齋藤 仁(関東学院大学 経済学部)、コンビーナ:八反地 剛(筑波大学生命環境系)、Parkner Thomas(University of Tsukuba, Graduate School of Life and Environmental Sciences)、コンビーナ:南雲 直子(土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター)、座長:齋藤 仁(関東学院大学 経済学部)、南雲 直子(土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター)


09:30 〜 09:45

[HGM03-05] GPR探査による遠州灘沿岸低地の極浅部地下構造推定 ―浜堤地形発達過程の解明に向けて

*中埜 貴元1松多 信尚2西山 弘祥2 (1.国土交通省国土地理院、2.岡山大学)

キーワード:GPR探査、遠州灘、海岸地形、浜堤、極浅部地下構造

1.はじめに
南海トラフでの地震の多様性を明らかにするために,筆者らは遠州灘沿岸低地を対象に,地形形成速度の速い堆積性の海岸地形(浜堤及び海岸平野)の地形発達過程の類型化と地震性地殻変動の影響度の抽出を行い,完新世地形の発達史から地震時と地震間の地殻変動を復元することを試みている.その一方で,海岸地形の地形発達過程は十分に明らかになっていないため,この地域の古地理を復元するためにこれまで菊川低地やその西方の浜堤平野においてボーリング調査や浅層反射法探査(稲崎ほか,2021),GPR探査(中埜ほか,2020)などを併用した調査が行われてきている.これらの調査により,複数の地点で埋没谷の存在を示唆する結果が得られており,今回はその平面的な分布や地下10m以浅の極浅層地下構造を明らかにするために,GPR(地中レーダ)探査を実施した.

2.調査概要
調査地域及びGPR探査測線位置を図-1に示す.GPR探査は2021年12月12~13日にかけて実施した.GPR探査にはSensors & Software社製Noggin Plusを用い,アンテナ中心周波数は250MHzとした.データ解析には同社製EKKO_Project5を用いた.解析では基本的な処理(ノイズ低減処理,移動平均処理,ゲイン回復処理,マイグレーション処理,地形補正等)を行った.電磁波の伝搬速度はhyperbola fitting法により推定し,往復走時を絶対深度に変換した.
調査地域は,菊川低地西方の浜堤平野に位置する大渕サイト(Site OB),菊川右岸の浜堤上に位置する大浜中学校サイト(Site OH),菊川と下小笠川に挟まれ基盤岩のシルト岩で構成された丘陵地の脇に位置する中サイト(Site NK)の3サイトである.大渕サイトでは,稲崎ほか(2021)による浅層反射法探査で埋没谷が確認されており,その極浅部地下構造の検出を目的とした.大浜中学校サイトでは,ボーリング調査で埋没谷の存在が示唆されており,その極浅部地下構造の検出と浜堤の内部構造把握を目的とした.中サイトでは基盤岩の地下分布の検出を目的とした.

3.結果と考察
本発表では良好な結果が得られた大渕サイトと大浜中学校サイトの代表的な結果を報告する.
大渕サイトの測線OB-L1においては,浅層反射法探査により水平距離150~250m付近に埋没谷が確認されていたが,GPR探査でも水平距離155~205mで凹型の反射面が確認でき,埋没谷を埋める堆積層の構造を捉えたと考えられる.また,水平距離245m付近では北側(埋没谷側)に落ち込む明瞭な反射面が見られ,埋没谷南縁の肩部の落ち込みを捉えたと考えられる.この測線の東側に位置する測線OB-L6においては,水平距離225~270mと280~315mの隣り合う2か所で小規模な埋没谷を示す反射構造が得られた.この測線のすぐ西側には中新井池があるが,1962年の空中写真ではこの池は探査測線の位置まで伸びており,水平距離225~270mの埋没谷構造は埋め立てられた池を捉えたものと考えられる.同空中写真では測線OB-L1の埋没谷の位置で東西方向に伸びる浅い谷が確認でき,その浅い谷は南東方向に折れて中新井池へとつながっている.中新井池の南東部では浅い谷がUターンして西流しているようにも見え,水平距離280~315mの埋没谷はそれを捉えた可能性がある.
大浜中学校サイトの南北方向の4測線では,浜堤頂部付近及び南側斜面において地下2~3m(それぞれ標高5~6mと4~5m)付近に概ね平坦な明瞭な反射面が検出された.測線OH-L4に近いボーリングデータでは,地表から深さ5m付近までは細砂で,深さ1.5m前後と2.1m前後にシルトが混じる薄層を挟んでいる.このボーリング地点の地表は測線OH-L4の最近接地点よりも0.7mほど標高が低いことを考慮すると,GPR探査で捉えた地下2~3m付近の明瞭な反射面は,細砂中に挟在するシルト混じり砂層を捉えた可能性がある.

4.まとめ
浜堤平野及び浜堤上でのGPR探査により,浅層反射法探査では識別が難しい極浅層の構造を捉えることができ,小規模な埋没谷や埋没池を検出した.また,浜堤部においては細砂中に挟在する土質の異なる薄層の分布も捉えることができた.今後は他の調査結果と併せて調査地域の古地理の復元を試みたい.

謝辞:本研究はJSPS科研費 JP18H00765の助成を受けたものです.調査に使用したGPR探査装置は名古屋大学の鈴木康弘教授よりお借りしました.ここに記して感謝申し上げます.

引用文献:
稲崎ほか(2021):JpGU2021,HTT17-03.
中埜ほか(2020):JpGU-AGU Joint Meeting 2020,HGM03-P09.