日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM03] 地形

2022年5月23日(月) 09:00 〜 10:30 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:齋藤 仁(関東学院大学 経済学部)、コンビーナ:八反地 剛(筑波大学生命環境系)、Parkner Thomas(University of Tsukuba, Graduate School of Life and Environmental Sciences)、コンビーナ:南雲 直子(土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター)、座長:齋藤 仁(関東学院大学 経済学部)、南雲 直子(土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター)


09:45 〜 10:00

[HGM03-06] 節理が十分に発達した岩盤におけるプラッキング発生の閾値と流れの特性:水槽実験

*石塚 雅大1遠藤 徳孝1 (1.金沢大学)


キーワード:プラッキング、水槽実験、引張強度、岩盤河川、岩盤侵食、数値シミュレーション

岩盤河川における侵食の主なメカニズムは、輸送される砕屑物粒子による摩耗作用であるアブレージョンと節理などの結合の弱い箇所でその割れ目に沿って岩塊が剥離するプラッキングである。アブレージョンの実験研究は多くなされており、定性的かつ定量的な理解が進んでいる。一方で、プラッキングは定性的な理解は進んではきているものの、定量的な理解は遅れている。本研究では、プラッキング発生の閾値を引張強度で表す。プラッキング発生前の岩盤は、ゆるく基盤と結合しているか、もしくは亀裂によって完全に分離しているが周囲とかみ合った状態である。こうした状態(結合やかみ合いの程度)は個々の部分において千差万別であり、プラッキングのしやすさ(あるいはしにくさ)を定量化することを難しくしている。本研究では、プラッキング発生準備段階の岩盤の緩い結合状態を、室内アナログ実験により磁石を用いてモデル化し、引張による分離が起きる際の限界の力(引張強度)により結合状態を定量化し、数値シミュレーションと組み合わせて解析を行った。室内モデル実験には、長さ650 cm、幅15.3 cm、高さ15 cm、勾配0.5 %の循環型一方向流水槽を用い、下流の堰を段階的に下げて平均流速を上げながら河床を観察した。プラッキングで剥離する岩盤ブロックのアナログ材料にプラスチック製ブロックを用いた。各条件では、引張強度や基盤との結合部の向きを変化させ、10回ずつ実験を行い、再現性を確認した。プラッキング発生時の流速プロファイルや底面せん断応力、せん断速度といったパラメータは数値シミュレーションソフト(CADMAS-SURF)から算出した。その結果、わずかな引張強度の差がプラッキング発生の抑制に大きく寄与した。自然界でも、引張強度がほとんどない岩盤でプラッキングが発生することが推測される。しかし、短期間での水理条件や気象の大きな変動が起きた際には、ある程度引張強度を持った状態の岩塊でもプラッキングが発生することが考えられる。今後は、プラッキング発生の閾値を引張強度と流れの状態から予測できるか検証を続けていきたい。