日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM03] 地形

2022年5月30日(月) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (11) (Ch.11)

コンビーナ:齋藤 仁(関東学院大学 経済学部)、コンビーナ:八反地 剛(筑波大学生命環境系)、Parkner Thomas(University of Tsukuba, Graduate School of Life and Environmental Sciences)、コンビーナ:南雲 直子(土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター)、座長:南雲 直子(土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター)


11:00 〜 13:00

[HGM03-P02] 土石流扇状地の三次元形状と土石流の流下・堆積範囲の関係 ―2014年広島豪雨災害の事例―

*矢澤 優菜1小倉 拓郎2、原田 駿介1八反地 剛2、土志田 正二3田中 靖4 (1.筑波大学生命環境学群地球学類、2.筑波大学生命環境系、3.消防研究センター、4.駒澤大学文学部)

キーワード:土石流扇状地、土石流、微地形、人口構造物、1m DEM

本研究では,1 mDEMを用いて土石流扇状地上の人工構造物や微地形を可視化することで,土石流扇状地の三次元形状と土石流の流下・堆積範囲の関係を明らかにすることを目的とする.対象地域は,広島県広島市安佐南区緑井地区であり,地質条件が等しく規模の異なる2つの土石流扇状地を解析対象とした.これらの扇状地では,2014年8月20日の豪雨によって同規模の土石流が発生し,住宅地が被害を受けた.土石流の流下・堆積範囲を,1 mDEMから算出した発災前後の地形変化量や空中写真を参考に判読し,対象とする土石流扇状地の地形量(面積,縦断形,分散角など)を計測した.また,土石流の流下・堆積に影響を与える扇面上の微地形を可視化するために,扇頂から扇端までを一様な勾配で構成されると仮定した仮想扇面DEMを作成し,発災前のDEMと差分解析を行った.解析の結果,対象地域で発生した土石流は,土石流扇状地の扇面を,相対的に標高が低い方向に向かって流下したことを確認した.また,扇央部では,土石流が急勾配の道路を流路として選択して流動した.さらに,扇端部では,急激に緩勾配な箇所に流入することで,土石流が進行方向と直交する方向に拡散した.以上の結果より,土石流の挙動と影響を受ける構造物は,扇頂からの距離に応じて異なる傾向を示した.土石流の流下方向を最も決定づける要因は扇頂部付近の微地形の形状であり,道路拡幅と宅地造成による平地の拡大が影響した可能性がある.また,住宅等の人工構造物が土石流の流下を阻害し,流路変動を促したことが確認できた.この一連の土石流の挙動は,本研究で対象とした規模の異なる2つの土石流扇状地の両方で確認できた.土石流は,一旦道路に流入するとある程度流向が規制され,急勾配かつ流下方向に近い道路を選択して流下した.これは,土石流扇状地を縦断する道路と住宅地の相対的な高度差が影響している.また,扇端部に近づくほど扇面は緩勾配であること,道路と住宅の高度差が小さくなりやすくなることの2点が土石流の停止に寄与した可能性がある.