11:00 〜 13:00
[HGM03-P05] 画像解析を用いた河川における礫粒子の円磨度変化-常願寺川,相模川,四万十川を例に-
キーワード:円磨度、四万十川、常願寺川、相模川
・はじめに
粒子の形状パラメータは様々なものが考案されてきた(Blott and Pye, 2008)。その中でも円磨度は礫などの形状記載によく用いられており、定性的な表現から定量的なものまで存在する。本研究で使用するWadell(1932)の円磨度(以後、R)は、粒子外形内の最大内接円と外形の凸部に内接する内接円の半径が使用され、0から1の値を取り、1に近いほど丸い。国内では中山(1954,1965)、中山・三浦(1964)により、国内の河川・海浜の礫に対してRが実測されている。しかし、これらの研究では平均値のみが使用され、そのヒストグラムの分布などを用いた議論はされていない。これは1地点あたりのデータ量に制約があったためと思われる。さらに、最近では粒子の運搬過程での粒子形状や質量の変化が実験やモデル計算を用いてより詳細に議論されている(例えば、Domokos et al., 2014)。しかし、実際の河川礫の形状変化などのデータは十分に得られておらず、これら実験やモデルの結果との比較が将来的な課題と考えられる。そこで本研究では、WadellのRを画像解析に基づき、多量かつ高精度に求め、河川勾配の異なる3河川を例に上流から下流までのRの変化を求めた。本発表では、予察的ではあるが3河川の上流から下流へのRの変化を議論する。
・調査地域と手法
対象とする3河川は、勾配の大きなものから常願寺川、相模川、四万十川である。礫の採取地点間隔は5–30 kmに設定し、人工的な改変の影響が少ない地点を選定した。対象の粒径は2–64 mmで、1φ毎に採取した。32–64 mmの礫は重量が大きいため、全ての地点での採取は行っていないが、2–32 mmの礫は全ての地点で採取した。粒径毎の粒子数は、32–64 mmの礫については150個以上、16–32 mmの礫については500個以上、16 mm以下の礫については約2000個を目安に採取・解析を行った。Rは、Zheng and Hryciw(2015)で開発されたコードを使用して求めた。画像撮影や解析の設定についてはIshimura and Yamada(2019)に従った。Rの平均値・中央値・最頻値、ヒストグラムの歪度・尖度を求め、以下ではRの平均値とヒストグラムの歪度を中心に結果を記載する。
・結果
四万十川では、上流端から約4 km地点と海岸で異なる平均値を示す。その間の区間ではほぼ同様の平均値を示し、下流へ向かって漸増する傾向を示す。上流端から4 km地点と次の11 km地点の間、最下流部と海岸部の間で、平均値がいずれの粒径でも急増した。歪度はばらつくものの、粒径が大きいものほど上流側で歪度が負の値に転じる傾向が認められた。
相模川では、ダム湖があるため山間部では一部区間で礫採取ができていないが、最上流部と平野部を対象に採取・解析した。四万十川と同様に、上流端から4 km地点と次の11 km地点の間において、32 mm以下の礫で平均値の急増が認められた。11 km地点より下流側では、平均値の漸増が認められた。歪度はばらつくものの、全体としては下流へ向かっての減少傾向を示す。
常願寺川では、山間部(立山駅付近)から河口までの変化を述べる。山間部から河口部までは、平均値の大きな変化は認められず、下流へ向かって漸増する傾向を示した。歪度は四万十川ほど明瞭ではないが、粒径の大きなものほど小さな値を示す。
・考察・まとめ
下流へ向かったRの変化については、最上流部でのRの急増とその後の漸増という傾向が認められた。このような傾向は、Krumbein(1941)やNovák-Szabó et al.(2018)などで示されている円磨過程初期の円磨度・円形度の急増とその後の緩やかな増加・収束を反映したものと思われ、本研究でも同様の傾向が認められた。また、Rの平均値は大きく変化しないものの、歪度が下流へ向かって減少し、正から負に変化する。このことから歪度がRの収束の程度を反映している可能性が示唆される。
四万十川の河川中ではRの平均値はある値に収束したが、河口に隣接する海浜ではRの平均値がさらに増加した。このことは礫種による理想的なRの収束値は河川中の収束値よりも高いことを意味しており、河川と海岸での円磨過程の違いを示している可能性がある。河川中で収束するRの値は、各河川・各粒度で異なり、0.4–0.6の値を示す。3河川全てで、粒度が大きくなるほど、収束するRの値が大きくなる傾向が認められた。
発表までに、相模川の情報を追加し、考察については他の形状情報の議論、他の地形量とRの関係の議論も行う予定である。
粒子の形状パラメータは様々なものが考案されてきた(Blott and Pye, 2008)。その中でも円磨度は礫などの形状記載によく用いられており、定性的な表現から定量的なものまで存在する。本研究で使用するWadell(1932)の円磨度(以後、R)は、粒子外形内の最大内接円と外形の凸部に内接する内接円の半径が使用され、0から1の値を取り、1に近いほど丸い。国内では中山(1954,1965)、中山・三浦(1964)により、国内の河川・海浜の礫に対してRが実測されている。しかし、これらの研究では平均値のみが使用され、そのヒストグラムの分布などを用いた議論はされていない。これは1地点あたりのデータ量に制約があったためと思われる。さらに、最近では粒子の運搬過程での粒子形状や質量の変化が実験やモデル計算を用いてより詳細に議論されている(例えば、Domokos et al., 2014)。しかし、実際の河川礫の形状変化などのデータは十分に得られておらず、これら実験やモデルの結果との比較が将来的な課題と考えられる。そこで本研究では、WadellのRを画像解析に基づき、多量かつ高精度に求め、河川勾配の異なる3河川を例に上流から下流までのRの変化を求めた。本発表では、予察的ではあるが3河川の上流から下流へのRの変化を議論する。
・調査地域と手法
対象とする3河川は、勾配の大きなものから常願寺川、相模川、四万十川である。礫の採取地点間隔は5–30 kmに設定し、人工的な改変の影響が少ない地点を選定した。対象の粒径は2–64 mmで、1φ毎に採取した。32–64 mmの礫は重量が大きいため、全ての地点での採取は行っていないが、2–32 mmの礫は全ての地点で採取した。粒径毎の粒子数は、32–64 mmの礫については150個以上、16–32 mmの礫については500個以上、16 mm以下の礫については約2000個を目安に採取・解析を行った。Rは、Zheng and Hryciw(2015)で開発されたコードを使用して求めた。画像撮影や解析の設定についてはIshimura and Yamada(2019)に従った。Rの平均値・中央値・最頻値、ヒストグラムの歪度・尖度を求め、以下ではRの平均値とヒストグラムの歪度を中心に結果を記載する。
・結果
四万十川では、上流端から約4 km地点と海岸で異なる平均値を示す。その間の区間ではほぼ同様の平均値を示し、下流へ向かって漸増する傾向を示す。上流端から4 km地点と次の11 km地点の間、最下流部と海岸部の間で、平均値がいずれの粒径でも急増した。歪度はばらつくものの、粒径が大きいものほど上流側で歪度が負の値に転じる傾向が認められた。
相模川では、ダム湖があるため山間部では一部区間で礫採取ができていないが、最上流部と平野部を対象に採取・解析した。四万十川と同様に、上流端から4 km地点と次の11 km地点の間において、32 mm以下の礫で平均値の急増が認められた。11 km地点より下流側では、平均値の漸増が認められた。歪度はばらつくものの、全体としては下流へ向かっての減少傾向を示す。
常願寺川では、山間部(立山駅付近)から河口までの変化を述べる。山間部から河口部までは、平均値の大きな変化は認められず、下流へ向かって漸増する傾向を示した。歪度は四万十川ほど明瞭ではないが、粒径の大きなものほど小さな値を示す。
・考察・まとめ
下流へ向かったRの変化については、最上流部でのRの急増とその後の漸増という傾向が認められた。このような傾向は、Krumbein(1941)やNovák-Szabó et al.(2018)などで示されている円磨過程初期の円磨度・円形度の急増とその後の緩やかな増加・収束を反映したものと思われ、本研究でも同様の傾向が認められた。また、Rの平均値は大きく変化しないものの、歪度が下流へ向かって減少し、正から負に変化する。このことから歪度がRの収束の程度を反映している可能性が示唆される。
四万十川の河川中ではRの平均値はある値に収束したが、河口に隣接する海浜ではRの平均値がさらに増加した。このことは礫種による理想的なRの収束値は河川中の収束値よりも高いことを意味しており、河川と海岸での円磨過程の違いを示している可能性がある。河川中で収束するRの値は、各河川・各粒度で異なり、0.4–0.6の値を示す。3河川全てで、粒度が大きくなるほど、収束するRの値が大きくなる傾向が認められた。
発表までに、相模川の情報を追加し、考察については他の形状情報の議論、他の地形量とRの関係の議論も行う予定である。