日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM03] 地形

2022年5月30日(月) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (11) (Ch.11)

コンビーナ:齋藤 仁(関東学院大学 経済学部)、コンビーナ:八反地 剛(筑波大学生命環境系)、Parkner Thomas(University of Tsukuba, Graduate School of Life and Environmental Sciences)、コンビーナ:南雲 直子(土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター)、座長:南雲 直子(土木研究所 水災害・リスクマネジメント国際センター)


11:00 〜 13:00

[HGM03-P06] 岩盤河川の蛇行度と河床勾配の関係

*高橋 直也1 (1.東北大学大学院理学研究科地学専攻)

キーワード:岩盤河川、蛇行、四万十帯

岩盤河川形状は,地質や気候などの様々な要素を反映している.そのため,それらの相互関係を明らかにすることは,長期的な地形発達の理解に役立つだけでなく,河川の縦断形から侵食速度や隆起速度を推定する上でも重要である.テクトニクスなどの環境要因と岩盤河川形状との関係について多くの研究が行われてきたが,蛇行の成長に伴う流路長の変化や,それに伴う岩盤河川形状の変化についてはあまり注目されてこなかった.流路長が変化すると河床勾配も変化するため,河川縦断形を正しく解釈するためには,蛇行の成長,短絡に伴う河川形状や侵食速度の変化について理解する必要がある.例えば,蛇行の成長に伴って蛇行部の勾配が低下すると,局所的に侵食速度が低下する.侵食速度の低下がある程度継続すると,蛇行部の上流側と下流側の勾配も変化し始めると予想され,それに伴って蛇行部の勾配が更に変化していくことも考えられる.このように,蛇行の成長に伴う勾配変化の影響が蛇行部の周辺にも及ぶ可能性があるため,蛇行の成長に伴う河川縦断形の変化は必ずしも単純ではない.そのため本研究では,蛇行による岩盤河川の勾配変化に着目し,蛇行度の差による河床勾配の変化量を明らかにすることを目的とする.
蛇行度の大きい河川が多く分布する四万十帯の分布域(図1)において,以下の地形解析を行なった.まず,国土地理院発行の10 m DEMを用いて河川を抽出した.河川の上流端は流域面積が1 km2以上となる地点とし,下流端は河谷と平野との境界に設定した.次に,抽出した河川を1km長の区間に細分し,分割した各区間(河川セグメント)について,平均ksn(Normalized steepness index)と蛇行度を計算した.ksnは河床勾配と流域面積から計算され,値が大きいほど急な河川であることを意味する.蛇行度は,河川セグメントの流路長を,セグメント両端の直線距離で除した値である.蛇行度とksnの関係を議論するためには侵食速度のデータが必要であるが,便宜上,侵食速度と正の相関がある地形起伏で代用した.地形起伏は,検索範囲内の最高点と最低点の標高の差であり,本研究では,各河川セグメントから距離(半径)2 kmの範囲内で計算した.予察的な解析結果では,起伏が同程度の場合,蛇行度が大きいほどksnが小さくなっており,対象とした4地域全てにおいて同様の傾向が見られた.したがって,地形起伏が侵食速度を正しく反映しているのであれば,蛇行の成長に伴って,河床勾配が大きく変化しうることを示唆している.ただし,蛇行部の周辺でも河床勾配が変化しうることや,河床勾配に影響する要素は他にも多く存在することから,蛇行度とksnの因果関係を検討するためには,更なる解析が必要である.