11:00 〜 13:00
[HQR04-P08] 古日記天候記録による小氷期の気候復元 ― 北陸の雷について ―
キーワード:古日記、古気候復元、雷、小氷期、北陸地方
【研究の概要】
・日記の天候記録をもとに,小氷期における金沢・富山の雷日数を復元
・金沢,富山のいずれもが,現在の数分の1程度の雷日数であることを確認
・近年の海表面温度の上昇が雷日数の増加を招いたことを示唆する
【研究目的】
これまで古気候復元研究は多様な資料を基に,梅雨前線帯の位置の復元,気圧配置型の復元,天候の季節推移の復元,洪水規模の再現,夏季の降水状況の定量的な復元など,様々な観点から研究が進められてきた.そうした中,雷に着目した古気候復元研究は限られている.そこで,本研究は小氷期における北陸地方の雷について復元を試みた後,過去と現代の天候記録について比較検討し,変化要因について考察した.
【研究方法】
小氷期の古気候を推定する資料には日記を用いた.『鶴村日記』により1827~1837年における石川県金沢市周辺の天候記録,『応響雑記』により1827~1843年における富山県氷見市周辺の天候記録を読み取った.また,気象庁のデータにより,現在の石川県金沢市および富山県富山市の天候記録を収集した.得られた天候記録はデータベースに入力し,各天気項目の記述があった日数を集計した.集計は,年間日数に加えて,夏季①(3~6月),夏季②(7・~10月),冬季(11~2月)の3つの期間別の日数集計も行った.
【結果】
<年間:現在←小氷期>
金沢:47.4日(3.2倍)←14.8日 / 富山:33.9日(2.5倍)←13.4日
<夏季①:現在←小氷期>
金沢:9.2日(3.2倍)←2.9日 / 富山:8.2日(2.9倍)←2.8日
<夏季②:現在←小氷期>
金沢:10.7日(1.6倍)←6.8日 / 富山:13.0日(1.7倍)←7.5日
<冬季:現在←小氷期>
金沢:27.5日(6.5倍)←4.3日 / 富山:12.8日(4.2倍)←3.0日
【考察】
金沢,富山の両地点において,年間および各期間とも,小氷期から現在にかけて雷日数が増加していることが確認された.中でも冬季の増加率が高いことが明らかとなり,現在は冬雷が多い北陸地方においても,小氷期にあっては夏雷が主体であったことが示された.
北陸地方の冬雷は,対馬暖流と季節風との温度差(正確には温位差)によって供給された水蒸気が積乱雲を形成することによって生じるため,本研究の結果は現在と比して小氷期における冬季の温度差が縮小していたことを示す.冬季の温度差の縮小には「気温の上昇」「海水温の低下」のいずれか,またはその両方が発生する必要がある.小氷期は低温期でありまた,現在は温暖化が進行しつつあるため前者に理由を求められない.また,完新世中は対馬暖流の流入が継続していたと考えられていることから小氷期に海水温が低下したと考え難い.日本近海の海表面温度は近年上昇傾向にあることを考慮すると,雷日数の変化は近年の温暖化に起因している可能性が示唆される.
・日記の天候記録をもとに,小氷期における金沢・富山の雷日数を復元
・金沢,富山のいずれもが,現在の数分の1程度の雷日数であることを確認
・近年の海表面温度の上昇が雷日数の増加を招いたことを示唆する
【研究目的】
これまで古気候復元研究は多様な資料を基に,梅雨前線帯の位置の復元,気圧配置型の復元,天候の季節推移の復元,洪水規模の再現,夏季の降水状況の定量的な復元など,様々な観点から研究が進められてきた.そうした中,雷に着目した古気候復元研究は限られている.そこで,本研究は小氷期における北陸地方の雷について復元を試みた後,過去と現代の天候記録について比較検討し,変化要因について考察した.
【研究方法】
小氷期の古気候を推定する資料には日記を用いた.『鶴村日記』により1827~1837年における石川県金沢市周辺の天候記録,『応響雑記』により1827~1843年における富山県氷見市周辺の天候記録を読み取った.また,気象庁のデータにより,現在の石川県金沢市および富山県富山市の天候記録を収集した.得られた天候記録はデータベースに入力し,各天気項目の記述があった日数を集計した.集計は,年間日数に加えて,夏季①(3~6月),夏季②(7・~10月),冬季(11~2月)の3つの期間別の日数集計も行った.
【結果】
<年間:現在←小氷期>
金沢:47.4日(3.2倍)←14.8日 / 富山:33.9日(2.5倍)←13.4日
<夏季①:現在←小氷期>
金沢:9.2日(3.2倍)←2.9日 / 富山:8.2日(2.9倍)←2.8日
<夏季②:現在←小氷期>
金沢:10.7日(1.6倍)←6.8日 / 富山:13.0日(1.7倍)←7.5日
<冬季:現在←小氷期>
金沢:27.5日(6.5倍)←4.3日 / 富山:12.8日(4.2倍)←3.0日
【考察】
金沢,富山の両地点において,年間および各期間とも,小氷期から現在にかけて雷日数が増加していることが確認された.中でも冬季の増加率が高いことが明らかとなり,現在は冬雷が多い北陸地方においても,小氷期にあっては夏雷が主体であったことが示された.
北陸地方の冬雷は,対馬暖流と季節風との温度差(正確には温位差)によって供給された水蒸気が積乱雲を形成することによって生じるため,本研究の結果は現在と比して小氷期における冬季の温度差が縮小していたことを示す.冬季の温度差の縮小には「気温の上昇」「海水温の低下」のいずれか,またはその両方が発生する必要がある.小氷期は低温期でありまた,現在は温暖化が進行しつつあるため前者に理由を求められない.また,完新世中は対馬暖流の流入が継続していたと考えられていることから小氷期に海水温が低下したと考え難い.日本近海の海表面温度は近年上昇傾向にあることを考慮すると,雷日数の変化は近年の温暖化に起因している可能性が示唆される.