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[HQR05-01] 信号再生法を用いた重晶石のESR年代測定の有用性と課題
キーワード:ESR年代測定、重晶石、熱水
重晶石 (BaSO4) を用いたESR(電子スピン共鳴)年代測定について、その可能性は示されていたものの[1]、SO3-ラジカルを用いて実用的に実現できる可能性が示されたのは比較的最近であり、海底熱水性重晶石に応用された[2]。海底熱水域で産する重晶石は、BaがRaに置換するため、これが主な自然放射線源となる。年間線量率がGy/yrのオーダーになることもあり、試料によっては、数年という若い年代を求めることもできる。一方、放射非平衡の考慮[3]や、α粒子による被曝を無視できないので、その生成効率を検討[4]するなどの研究が進められてきた。
海底熱水性重晶石のESR年代測定を、より詳細で、確度、精度の高いものとするためには、総被曝線量をより正しく求める必要がある。このためには、これまで用いられてきた付加線量法よりも、測定誤差が小さくなる信号再生法が有利であると考えられる。そこで、今回、海底熱水性重晶石のESR年代測定の信号再生法の手順の開発を試みた。
試料として、すでにESR年代の求められている[5] Yoron(ESR年代:70-150 yr)、Gondo(ESR年代:2500-3300 yr)の各海底熱水域から採取した試料、また年代の求められていない伊江山海底熱水域から採取した試料を用いた。
信号再生法では、加熱など、信号を消去した人為的な過程によって線量応答の感度が変化する場合があり、これを補正する必要がある。ルミネッセンス年代測定で開発されたSARA (single aliquot regenerative additive)[6]という手法を応用して、石英のESR年代測定では、この感度補正を行う手法が提案されている[7]が、これは線量応答が一次関数でなければならない。今回、分析した試料では、線量応答が飽和曲線と直線の和の形で表されることがわかった。そこで、横軸のシフト量、縦軸の拡大率という2つのパラメターを最小二乗法で求めることによって、付加線量法、再生法で得られた2つの線量応答をフィットさせ、総被曝線量、感度変化を求める手法を開発した。これを上記の試料に応用した結果について報告する。
References:
[1] Kasuya, M., Kato, M., Ikeya, M. (1991) In Essay in Geology, Prof. Nakagawa Commemorative Volume, 95-98.
[2] Okumura, T., Toyoda, S., Sato, F., Uchida, A., Ishibashi, J., Nakai, S. (2010)Geochronometria, 37, 57-61.
[3] Fujiwara, T., Toyoda, S., Uchida, A., Ishibashi, J., Nakai, S., and Takamasa, A. (2015) In Subseafloor Biosphere Linked to Global Hydrothermal Systems; TAIGA Concept, Springer, Tokyo, 369-386.
[4] Fujiwara, T., Toyoda, S., Uchida, A., Nishido, H., and Ishibashi, J. (2016) Geochronometria, 43, 174-178.
[5] Fujiwara, T. (2018), Ph.D Thesis, Okayama University of Science.
[6] Mejdahl, V. and Botter-Jensen, L. (1994) Quaternary Science Reviews, 7, 551-554.
[7] Toyoda, S., Miura, H., Tissoux, H. (2009) Radiation Measurements, 44, 483-487.
海底熱水性重晶石のESR年代測定を、より詳細で、確度、精度の高いものとするためには、総被曝線量をより正しく求める必要がある。このためには、これまで用いられてきた付加線量法よりも、測定誤差が小さくなる信号再生法が有利であると考えられる。そこで、今回、海底熱水性重晶石のESR年代測定の信号再生法の手順の開発を試みた。
試料として、すでにESR年代の求められている[5] Yoron(ESR年代:70-150 yr)、Gondo(ESR年代:2500-3300 yr)の各海底熱水域から採取した試料、また年代の求められていない伊江山海底熱水域から採取した試料を用いた。
信号再生法では、加熱など、信号を消去した人為的な過程によって線量応答の感度が変化する場合があり、これを補正する必要がある。ルミネッセンス年代測定で開発されたSARA (single aliquot regenerative additive)[6]という手法を応用して、石英のESR年代測定では、この感度補正を行う手法が提案されている[7]が、これは線量応答が一次関数でなければならない。今回、分析した試料では、線量応答が飽和曲線と直線の和の形で表されることがわかった。そこで、横軸のシフト量、縦軸の拡大率という2つのパラメターを最小二乗法で求めることによって、付加線量法、再生法で得られた2つの線量応答をフィットさせ、総被曝線量、感度変化を求める手法を開発した。これを上記の試料に応用した結果について報告する。
References:
[1] Kasuya, M., Kato, M., Ikeya, M. (1991) In Essay in Geology, Prof. Nakagawa Commemorative Volume, 95-98.
[2] Okumura, T., Toyoda, S., Sato, F., Uchida, A., Ishibashi, J., Nakai, S. (2010)Geochronometria, 37, 57-61.
[3] Fujiwara, T., Toyoda, S., Uchida, A., Ishibashi, J., Nakai, S., and Takamasa, A. (2015) In Subseafloor Biosphere Linked to Global Hydrothermal Systems; TAIGA Concept, Springer, Tokyo, 369-386.
[4] Fujiwara, T., Toyoda, S., Uchida, A., Nishido, H., and Ishibashi, J. (2016) Geochronometria, 43, 174-178.
[5] Fujiwara, T. (2018), Ph.D Thesis, Okayama University of Science.
[6] Mejdahl, V. and Botter-Jensen, L. (1994) Quaternary Science Reviews, 7, 551-554.
[7] Toyoda, S., Miura, H., Tissoux, H. (2009) Radiation Measurements, 44, 483-487.