日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-QR 第四紀学

[H-QR05] 地球惑星科学へのルミネッセンス・ESR年代測定の応用

2022年5月25日(水) 15:30 〜 17:00 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:豊田 新(岡山理科大学理学部応用物理学科)、コンビーナ:田村 亨(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、下岡 順直(立正大学地球環境科学部環境システム学科)、座長:下岡 順直(立正大学地球環境科学部環境システム学科)、豊田 新(岡山理科大学古生物学・年代学研究センター)、田村 亨(産業技術総合研究所地質情報研究部門)

16:00 〜 16:15

[HQR05-03] 九十九里浜現世海浜-陸棚における長石砂の残存線量

*小森 康太郎1,2田村 亨2,1 (1.東京大学大学院新領域創成科学研究科、2.産業技術総合研究所地質調査総合センター)

キーワード:残存線量、九十九里浜、ルミネッセンス年代

長石のIRSL(Infrared Stimulated Luminescence)やpIRIR(post-Infrared IRSL)信号は石英OSLに比べてブリーチが遅く,不完全露光に伴う余剰の信号による残存線量が生じやすい.残存線量は正確に年代を評価するための障壁である一方,堆積物粒子の侵食・運搬・堆積過程を理解するのに利用できる可能性がある.そこで本研究では,九十九里浜の海岸から海底の表層で採取した砂を対象として,残存線量の見積りとその空間的な傾向を検討した.測定は試料から抽出したカリ長石を多く含む直径180-250 µmの粒子について,SAR法により行った.pIRIRに伴うIRSLは50℃で測定し,またプレヒートはpIRIRの測定温度の+30℃に設定し,様々な信号の残存線量を求めた.
 残存線量は,ブリーチ速度を反映して,IRSLではプレヒート温度が高いほど,pIRIRでは測定温度が高いほど,大きくなる傾向があった.比較的低いプレヒート(150℃)でのIRSLは,ほとんどの海岸と海底の試料で線量は最大0.2 Gy程度で,全体によくブリーチされている.一方,150℃と225℃で測定したpIRIR150とpIRIR225の線量は海岸の試料でそれぞれ最大0.8 Gyと3 Gy程度であった.pIRIR290での線量は,海底から波打ち際の前浜でばらつきがあるものの8から14 Gy程度である一方,より陸側の砂丘に向かって低くなり7 Gy程度であった.これは風による運搬の際の露光によるブリーチを反映していると解釈できる.また,海底の試料では,海食崖の近傍や大深度の地点のいくつかで,他よりもpIRIRの余剰線量が大きくなった.今後測定点を増やすことが必要だが,今回得られた結果は,残存線量により海岸での砂の運搬過程の情報を引き出せる可能性があることを示している.