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[HQR05-04] 関東平野東縁海成段丘堆積物のpIRIR年代
キーワード:更新世、シーケンス層序学、ルミネッセンス年代、テクトニクス、地形
カリ長石のpIRIR(post-Infrared Infrared Stimulated Luminescence)は,石英OSLの数倍の高い飽和レベルを示し過去50万年間の堆積年代の決定に有効である.年代値の過小評価につながるフェーディングを補正する手法が確立され,また一方で過大評価につながる余剰線量についても現世堆積物の検討によりその影響の程度が明らかとなり,ルーティンで広く応用できる手法になってきた.ここでは,関東平野東縁の海成段丘を構成する地層の時代対比を,多数のpIRIR年代から検討した結果を報告する.対象とした地層は,標高約+20 m以下の海成および河川成堆積物の上位に海浜-外浜堆積物が重なる.この海浜-外浜堆積物は上限が標高約+30 mで,陸側では細粒から中粒砂が主体で厚さ数メートルの風成および河川堆積物に覆われるのに対し,海側では砂礫が主体で上位の風成・河川堆積物が見られない.ドーズリカバリテストの結果から,50℃でのIRSL測定の後に225℃に昇温して測定するpIRIR50/225を年代測定に用いた.フェーディングテストから求められるフェーディング率には試料ごとのばらつきがあるが,地点ごとの全試料の平均値を補正に用いることで,層序に整合的な補正年代が得られた.浅海堆積物のpIRIR年代は,陸側で110 ka前後,海側では85 kaから90 kaで,それぞれMIS 5cと5aに相当する.このことから行方台地東部から鹿島台地にかけての海成段丘は,従来考えられていたような最終間氷期前半の高海面期であるMIS 5eではなく,後半のやや海面が低い時代に形成されたと考えられる.また,下位の海成堆積物からは,MIS 5eとMIS 7の高海面期の他,160 kaから170 ka前後のMIS 6d-eの亜間氷期の年代も得られた.亜間氷期への対比は従来の層序では考えられていないが,当地域の隆起量を考慮した海面曲線とは整合的である.このように火山灰層の有無に左右されず任意の層準に適用できるpIRIR年代の普及により,更新世の地形や地層に関する知見の刷新が可能かもしれない.