11:00 〜 13:00
[HQR05-P02] 高蓄積線量石英の摩擦実験における光刺激ルミネッセンス(OSL)信号変化―大気湿度条件および水飽和条件下の場合―
キーワード:光刺激ルミネッセンス、摩擦実験、活断層
光刺激ルミネッセンス(OSL)年代測定は一般に堆積物の年代測定に用いられ,地球上に普遍的に存在する石英や長石を測定対象とし,数十万年前までの年代決定を得意とする(塚本・岩田, 2005).また,閉鎖温度が低く,熱に対して敏感であることから,第四紀断層の年代測定に適すると指摘されている(鴈澤ほか, 2013).OSL法は,自然放射線によって鉱物中に蓄積した捕獲電子が,熱や光などの外部刺激によってリセットする作用を用いるが,断層運動に関係するどのような刺激で年代値がリセットするかに関して,未解明な点が多い.Oohashi et al. (2020) は,粉末石英に対してすべり速度を多様に変化させた摩擦実験を行い,OSL信号がすべり速度の増加と摩擦発熱の増大に伴って指数関数的に減少することを報告した.しかし,実際に用いた石英の蓄積線量が少なく,OSL信号の減少過程量について,詳細な検討がされていない.そこで,本研究では石英に高線量を蓄積させることで,断層運動とOSL信号減少量との関係をより詳細に検討することを試みた.また,大気湿度条件(air-dry)に加え水飽和条件(water-saturated)でも摩擦実験を行うことにより,日本のような湿潤地域でのOSL信号変化を明らかにすることにした.
出発物質は,山口県宇部市丸尾港付近の堆積物から分離・抽出した150-250 μmの石英粒子に,約200 Gyのガンマ線を蓄積させたものである.実験条件は,速度は0.65 m/sで一定,変位量は2.1 mで一定,垂直応力は0.5-5.0 MPaである.また,熱電対を石英のすべり面と固定側シリンダーとの境界に設置し,石英帯内の最高温度を測定した.OSL測定には,破砕の影響が最小である粒径150 μm以上の石英を用いた.
測定の結果,大気湿度・水飽和ともに垂直応力の増加と摩擦発熱の増大に伴ってOSL信号は指数関数的に減少することが分かった.出発物質に高線量を蓄積させたが,蓄積線量が粒子間で一定でなかったため,断層運動とOSL信号減少量との関係を厳密に検討することはできなかった.しかし,OSL信号の減少および完全リセットが認められた実験の温度測定より,石英帯内の最高温度が385-532 ℃(水飽和では垂直応力3.0 MPa,大気湿度では2.0 MPaの実験に相当)に達するとOSL信号の減少が始まり,最低温度が238 ℃に達すると完全リセットが起こると考えられる.
参考文献
鴈澤好博・高橋智佳史・三浦知督・清水聡(2013)光ルミネッセンスと熱ルミネッセンスを利用した活断層破砕帯の年代測定法. 地質学雑誌, 第119巻, 第11巻, 714-726.
Oohashi, K., Minomo, Y., Akasegawa, K., Hasebe, N., and Miura, K. (2020) Optically stimulated luminescence signal resetting of quartz gouge during subseismic to seismic frictional sliding: A case study using granite derived quartz. Journal of Geophysical Research: Solid Earth, 125, e2020JB019900.
塚本すみ子・岩田修二(2005)ルミネッセンス年代測定法の最近の進歩-適応年代の拡大と石英のOSL成分について-. 地質学雑誌, 第111巻, 第11号, 643-653.
出発物質は,山口県宇部市丸尾港付近の堆積物から分離・抽出した150-250 μmの石英粒子に,約200 Gyのガンマ線を蓄積させたものである.実験条件は,速度は0.65 m/sで一定,変位量は2.1 mで一定,垂直応力は0.5-5.0 MPaである.また,熱電対を石英のすべり面と固定側シリンダーとの境界に設置し,石英帯内の最高温度を測定した.OSL測定には,破砕の影響が最小である粒径150 μm以上の石英を用いた.
測定の結果,大気湿度・水飽和ともに垂直応力の増加と摩擦発熱の増大に伴ってOSL信号は指数関数的に減少することが分かった.出発物質に高線量を蓄積させたが,蓄積線量が粒子間で一定でなかったため,断層運動とOSL信号減少量との関係を厳密に検討することはできなかった.しかし,OSL信号の減少および完全リセットが認められた実験の温度測定より,石英帯内の最高温度が385-532 ℃(水飽和では垂直応力3.0 MPa,大気湿度では2.0 MPaの実験に相当)に達するとOSL信号の減少が始まり,最低温度が238 ℃に達すると完全リセットが起こると考えられる.
参考文献
鴈澤好博・高橋智佳史・三浦知督・清水聡(2013)光ルミネッセンスと熱ルミネッセンスを利用した活断層破砕帯の年代測定法. 地質学雑誌, 第119巻, 第11巻, 714-726.
Oohashi, K., Minomo, Y., Akasegawa, K., Hasebe, N., and Miura, K. (2020) Optically stimulated luminescence signal resetting of quartz gouge during subseismic to seismic frictional sliding: A case study using granite derived quartz. Journal of Geophysical Research: Solid Earth, 125, e2020JB019900.
塚本すみ子・岩田修二(2005)ルミネッセンス年代測定法の最近の進歩-適応年代の拡大と石英のOSL成分について-. 地質学雑誌, 第111巻, 第11号, 643-653.