日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-RE 応用地質学・資源エネルギー利用

[H-RE13] 資源地質学

2022年5月25日(水) 09:00 〜 10:30 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:大竹 翼(北海道大学大学院工学研究院 環境循環システム部門)、コンビーナ:実松 健造(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 鉱物資源研究グループ)、高橋 亮平(秋田大学大学院国際資源学研究科)、コンビーナ:野崎 達生(国立研究開発法人 海洋研究開発機構 海洋機能利用部門 海底資源センター)、座長:大竹 翼(北海道大学大学院工学研究院 環境循環システム部門)、実松 健造(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 鉱物資源研究グループ)

09:00 〜 09:30

[HRE13-01] バイオベースの金属イオン吸着材料:基本概念と応用

★招待講演

*中島 一紀1 (1.北海道大学)

キーワード:バイオソープション、セルロース、環境調和型材料

有価金属の回収や有害重金属の除去などに用いられる金属イオン吸着剤は,通常合成ポリマー(樹脂)がベースとなっているが,将来的な低炭素社会の実現のためには石油化学品に置き換わる新たな材料・技術の開発が必要である。我々は,セルロースとタンパク質のみからなる完全に生体由来の材料からなる新たなコンセプトの金属イオン吸着剤を開発した。これまでに様々な金属イオン結合タンパク質/ペプチドが,天然から発見あるいは進化分子工学的手法により創製されている。しかし,タンパク質/ペプチドは基本的には水溶性であるため,金属イオンと錯形成したとしても水溶液中からの回収はできない。そこで,我々は金属イオン結合タンパク質を不溶性のセルロースに固定化して用いる手法を考えた。しかし,タンパク質をセルロースに固定化する際,有機化学的手法を用いると非特異的な固定化や機能の損失が生じるため,多糖結合モジュール(CBM)というセルロースへの結合性が知られているタンパク質を足場とした金属結合性タンパク質の固定化を検討した。つまり,金属イオン結合タンパク質とCBMを分子レベルで融合し,それをセルロースに固定化するというアプローチである。なお,金属結合部位はターゲット金属イオン(例えば,Ni2+,Co2+,Au3+,有害重金属)に応じて,タンパク質工学的手法により任意かつ容易に変更することができる。本研究で開発した完全バイオベースの多機能性金属イオン吸着剤は,将来環境調和型の金属イオン回収技術として利用できると思われる。