09:00 〜 09:30
[HRE13-01] バイオベースの金属イオン吸着材料:基本概念と応用
★招待講演
キーワード:バイオソープション、セルロース、環境調和型材料
有価金属の回収や有害重金属の除去などに用いられる金属イオン吸着剤は,通常合成ポリマー(樹脂)がベースとなっているが,将来的な低炭素社会の実現のためには石油化学品に置き換わる新たな材料・技術の開発が必要である。我々は,セルロースとタンパク質のみからなる完全に生体由来の材料からなる新たなコンセプトの金属イオン吸着剤を開発した。これまでに様々な金属イオン結合タンパク質/ペプチドが,天然から発見あるいは進化分子工学的手法により創製されている。しかし,タンパク質/ペプチドは基本的には水溶性であるため,金属イオンと錯形成したとしても水溶液中からの回収はできない。そこで,我々は金属イオン結合タンパク質を不溶性のセルロースに固定化して用いる手法を考えた。しかし,タンパク質をセルロースに固定化する際,有機化学的手法を用いると非特異的な固定化や機能の損失が生じるため,多糖結合モジュール(CBM)というセルロースへの結合性が知られているタンパク質を足場とした金属結合性タンパク質の固定化を検討した。つまり,金属イオン結合タンパク質とCBMを分子レベルで融合し,それをセルロースに固定化するというアプローチである。なお,金属結合部位はターゲット金属イオン(例えば,Ni2+,Co2+,Au3+,有害重金属)に応じて,タンパク質工学的手法により任意かつ容易に変更することができる。本研究で開発した完全バイオベースの多機能性金属イオン吸着剤は,将来環境調和型の金属イオン回収技術として利用できると思われる。