10:00 〜 10:15
[HRE13-04] 銅板浸漬バッチ試験によるシリカスケールインヒビターの予察的な探索・評価手法の開発
キーワード:シリカスケール、インヒビター
熱水卓越型地熱発電所では、気液分離後の地熱熱水からの地上設備や還元井戸周辺の地層中でのシリカスケール生成が運転上の深刻な問題となってきた。シリカスケール生成を抑制するために、多くの発電所では熱水に硫酸を添加してpHを下げるpH調整法が採用されている。そのpH調整法では、地上設備でのシリカスケール生成は抑制されたが、還元井による熱水の飲み込み容量の低下は依然として止まらないのが現状であり、新たなシリカスケール生成防止法が望まれている。その1つがインヒビターの利用であるが、現在までにシリカスケール抑制機能を示す薬剤(シリカスケールインヒビター)は見出されておらず、またインヒビター候補となる薬剤を評価する手法も確立されていない。
そこで本研究では、多くの市販薬剤の中からシリカスケールの抑制に効果的なインヒビターの探索と短時間での評価法の確立を目的とした。実験には、地熱発電所の気液分離後のpH8.3の熱水を用いた。まず使用した熱水の化学的性質を明らかにするために、ケイ酸の重合実験、シリカゲルへのケイ酸およびアルミニウムの吸着実験を行い、シリカスケール生成に関係する熱水中のケイ酸、アルミニウムの挙動を調べた。その上で熱水のみの場合と3種のインヒビターを加えた熱水を用いた場合の計4条件で、1時間ごとに新しい熱水と交換する5時間の銅板浸漬バッチ実験(90℃)を行い、ポータブルXRF、SEM-EDX、LA-ICP-MSにより、銅板表面に析出する元素量の時間変化を測定することでインヒビター評価の可能性を検討した。なお、今回選択した薬剤は、ポリアクリル酸(PAA)、acumer5000、Tironであった。
熱水性状試験の結果、O-12R号井熱水中ではケイ酸の重合反応はほとんど起こらなかったが、単核アルミニウム化学種濃度は減少した。これは、アルミニウムを含むオリゴケイ酸が生成したためと予想される。また、シリカゲルへのケイ酸の吸着はゆっくりと起こったが、アルミニウムの吸着は急激に起こった。これらの結果は、この熱水から生成するシリカスケールはアルミノケイ酸塩であることを示唆する。
試薬を含まない熱水への銅板浸漬バッチ試験から得られた銅板について、表面のケイ酸(Si)の付着量を現場でポータブルXRFで分析したところ、その付着量は時間とともに増加した。SEM-EDXおよびLA-ICP-MSによる銅板表面の分析からはSi, Al, Caの付着量が時間とともに増加するということが明らかとなった。すなわち、このバッチ実験により熱水からのシリカスケール生成過程を検出できることがわかった。各薬剤を10, 20, 30 ppm添加した熱水による銅板浸漬実験では、以下のような結果が得られた:(1)PAAの場合は、薬剤無添加の場合のSiとAlの付着量とほぼ同じでスケール抑制効果は見られず、薬剤無添加の場合よりもSiやAl付着量が多い時もあった。(2)accumer 5000の場合は、薬剤無添加の時よりもSi, Al, Caの付着量は少なかった。(3)Tironの場合は、スケールを構成するSi, Al, Caはほとんど付着しなかった。これらの結果から各試薬のシリカスケールインヒビターとしての評価は以下にように要約できる:Tironはシリカスケールインヒビターとして非常に有効である。Accumer 5000も一定程度シリカスケールインヒビターとして機能する可能性がある。一方、PAAはシリカスケールインヒビターとしては機能しないこと、場合によっては、シリカスケール生成を増加させるかもしれない。
以上のことから、発電所の熱水を用いて銅板浸漬バッチ試験を行ったところ数時間以内の浸漬試験時間でシリカスケール成分の定性・定量が可能であること、インヒビター性能評価が可能であることがわかった。さらに、Tironのシリカスケールインヒビターとしての優位性を見出すことができた。
そこで本研究では、多くの市販薬剤の中からシリカスケールの抑制に効果的なインヒビターの探索と短時間での評価法の確立を目的とした。実験には、地熱発電所の気液分離後のpH8.3の熱水を用いた。まず使用した熱水の化学的性質を明らかにするために、ケイ酸の重合実験、シリカゲルへのケイ酸およびアルミニウムの吸着実験を行い、シリカスケール生成に関係する熱水中のケイ酸、アルミニウムの挙動を調べた。その上で熱水のみの場合と3種のインヒビターを加えた熱水を用いた場合の計4条件で、1時間ごとに新しい熱水と交換する5時間の銅板浸漬バッチ実験(90℃)を行い、ポータブルXRF、SEM-EDX、LA-ICP-MSにより、銅板表面に析出する元素量の時間変化を測定することでインヒビター評価の可能性を検討した。なお、今回選択した薬剤は、ポリアクリル酸(PAA)、acumer5000、Tironであった。
熱水性状試験の結果、O-12R号井熱水中ではケイ酸の重合反応はほとんど起こらなかったが、単核アルミニウム化学種濃度は減少した。これは、アルミニウムを含むオリゴケイ酸が生成したためと予想される。また、シリカゲルへのケイ酸の吸着はゆっくりと起こったが、アルミニウムの吸着は急激に起こった。これらの結果は、この熱水から生成するシリカスケールはアルミノケイ酸塩であることを示唆する。
試薬を含まない熱水への銅板浸漬バッチ試験から得られた銅板について、表面のケイ酸(Si)の付着量を現場でポータブルXRFで分析したところ、その付着量は時間とともに増加した。SEM-EDXおよびLA-ICP-MSによる銅板表面の分析からはSi, Al, Caの付着量が時間とともに増加するということが明らかとなった。すなわち、このバッチ実験により熱水からのシリカスケール生成過程を検出できることがわかった。各薬剤を10, 20, 30 ppm添加した熱水による銅板浸漬実験では、以下のような結果が得られた:(1)PAAの場合は、薬剤無添加の場合のSiとAlの付着量とほぼ同じでスケール抑制効果は見られず、薬剤無添加の場合よりもSiやAl付着量が多い時もあった。(2)accumer 5000の場合は、薬剤無添加の時よりもSi, Al, Caの付着量は少なかった。(3)Tironの場合は、スケールを構成するSi, Al, Caはほとんど付着しなかった。これらの結果から各試薬のシリカスケールインヒビターとしての評価は以下にように要約できる:Tironはシリカスケールインヒビターとして非常に有効である。Accumer 5000も一定程度シリカスケールインヒビターとして機能する可能性がある。一方、PAAはシリカスケールインヒビターとしては機能しないこと、場合によっては、シリカスケール生成を増加させるかもしれない。
以上のことから、発電所の熱水を用いて銅板浸漬バッチ試験を行ったところ数時間以内の浸漬試験時間でシリカスケール成分の定性・定量が可能であること、インヒビター性能評価が可能であることがわかった。さらに、Tironのシリカスケールインヒビターとしての優位性を見出すことができた。