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[HRE13-10] 休廃止鉱山のズリ堆積場ボーリングコア試料に含まれる重金属類の溶出挙動評価
キーワード:休廃止鉱山、ズリ堆積場、重金属類、溶出試験
【はじめに】休廃止鉱山から排出される坑廃水は銅や鉛、亜鉛のような重金属類を多く含み、世界各地で河川や農地、地下水汚染を引き起こしている。日本国内においても多くの休廃止鉱山が存在しており、坑廃水の長期間の管理や処理が行われているが、坑廃水処理に要する費用の削減や効率化を行うためには、鉱山ごとの坑廃水の特徴や重金属の溶出機構を理解することが不可欠である。坑廃水は坑内だけでなく、ズリ堆積場からも発生する。堆積場に含まれるズリは深度により風化の進行度が異なり、地下水だけでなく雨水による影響も受けるため、坑内水と比較して複雑な機構で廃水が流出する。したがって、地表からの深度や酸化還元等の環境条件、地質特性の違いが重金属類の溶出挙動に与える影響を明らかにすることが重要である。本研究では、休廃止鉱山のズリ堆積場 (A鉱山と呼ぶ) の坑廃水発生機構や重金属類の挙動に影響を与える要因を明らかにすることを最終目的として、堆積場におけるボーリング調査およびコア試料に対する水による溶出試験 (46号試験と呼ぶ) を実施した。本発表では、46号試験の結果から、コア採取地点ごとの重金属類の関係を推測した。
【試料および実験手法】A鉱山は浅熱水性の銅、鉛、亜鉛鉱床であり、ズリ堆積場からは、pHが4程度で排水基準値を超える量のPbやZnを含む廃水が確認されている。ズリ堆積場で約10m×3本のボーリング調査を実施し、上流 (地点1)、中流 (地点2)、下流 (地点3)の3か所で1本ずつコアを採取した。コアは上から盛土または表土(層厚0.5m~2m)、ズリ(4m~7m)、河床礫(1m)、凝灰岩または安山岩で構成されていた。ズリは主に数cm程度の礫と砂質、シルト質の土壌からなり、一部、粘土状の塊も確認された。コア試料は最長30cm程度の間隔で分割し、一部は風乾後、目開き2mmのふるいを用いて分級を行った。2mm以下に篩別した試料をPP製容器に超純水とともに液固比10で封入し、6時間水平振とうを行った。その後、遠心分離機による固液分離を行い、上澄み液を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、pH・EC (電極)、硫酸イオン濃度 (IC)、溶存重金属イオン濃度 (ICP-MS) の測定を行った。この試験を各地点の分割したコア試料、合計124試料に対して実施した(n=3)。
【結果および考察】46号試験の結果、Cr (最高濃度:0.06 mg/L)、Mn (17.5 mg/L)、Fe (16.8 mg/L)、Co (0.80 mg/L)、Ni (2.4 mg/L)、Cu (15.8 mg/L)、Zn (152.2 mg/L)、As (0.14 mg/L)、Cd (1.3 mg/L)、Pb (11.5 mg/L) の溶出が確認され、特にAs、Cd、Pbは土壌溶出量基準値を超えた濃度が溶出していた。硫酸イオンの最高濃度は2010mg/Lであり、pHは3~8.25の範囲であった。地点ごとに結果を見ると、地点3の重金属類の溶出量が最も多く、特にCr、Mn、Ni、Cu、Zn、Cdの溶出が最大となった。次に地点2での溶出が多く、特にCoとPbの溶出が顕著にみられた。地点1はFeとAsの溶出量が3地点中最大であったが、その他重金属類の溶出量は少なく、地点3の0.1倍~0.4倍程度であった。
試料から溶出した重金属類とpH、硫酸イオン濃度の関連性を調べるために相関分析を行った。重金属類のうちMn、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、Pbが相互に正の相関(r > 0.52)を示していた。pHとAs以外の重金属類には負の相関(r < -0.45)が確認された。硫酸イオンと重金属類のうちMn、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、Pbに正の相関(0.42 < r <0.78)が確認された。一方で、重金属類と硫酸イオンの関係を地点ごとにみると、全地点の相関分析と異なる結果が確認された。地点1、2では硫酸イオンとCr、Fe、As以外の重金属類には弱い正の相関が確認されたが(0.07 < r < 0.6)、地点3では両者に強い正の相関が確認された(0.44 < r < 0.94)。坑廃水への重金属類の溶出機構として、硫化物の酸化とそれに伴うpHの減少が知られている。地点3の重金属類と硫酸イオンおよびpHに比較的強い相関が確認されたことから、硫化物の溶解が重金属類の溶出を規定する要因の一つであると考えられる。一方で、地点1と地点2では硫酸イオンと重金属類の強い相関が見られないことから、固相中の重金属類は硫化物以外の形態で存在していると推測される。46号試験の結果と重金属類の相関分析の結果から、ズリに含まれる重金属類の化学形態が地点ごとに異なることが示唆された。今後はコア試料の全量分析などを実施し、重金属類濃度や含有鉱物の違いからも、本研究のズリ堆積場における重金属類の溶出に関わる因子について検討していく。
【試料および実験手法】A鉱山は浅熱水性の銅、鉛、亜鉛鉱床であり、ズリ堆積場からは、pHが4程度で排水基準値を超える量のPbやZnを含む廃水が確認されている。ズリ堆積場で約10m×3本のボーリング調査を実施し、上流 (地点1)、中流 (地点2)、下流 (地点3)の3か所で1本ずつコアを採取した。コアは上から盛土または表土(層厚0.5m~2m)、ズリ(4m~7m)、河床礫(1m)、凝灰岩または安山岩で構成されていた。ズリは主に数cm程度の礫と砂質、シルト質の土壌からなり、一部、粘土状の塊も確認された。コア試料は最長30cm程度の間隔で分割し、一部は風乾後、目開き2mmのふるいを用いて分級を行った。2mm以下に篩別した試料をPP製容器に超純水とともに液固比10で封入し、6時間水平振とうを行った。その後、遠心分離機による固液分離を行い、上澄み液を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、pH・EC (電極)、硫酸イオン濃度 (IC)、溶存重金属イオン濃度 (ICP-MS) の測定を行った。この試験を各地点の分割したコア試料、合計124試料に対して実施した(n=3)。
【結果および考察】46号試験の結果、Cr (最高濃度:0.06 mg/L)、Mn (17.5 mg/L)、Fe (16.8 mg/L)、Co (0.80 mg/L)、Ni (2.4 mg/L)、Cu (15.8 mg/L)、Zn (152.2 mg/L)、As (0.14 mg/L)、Cd (1.3 mg/L)、Pb (11.5 mg/L) の溶出が確認され、特にAs、Cd、Pbは土壌溶出量基準値を超えた濃度が溶出していた。硫酸イオンの最高濃度は2010mg/Lであり、pHは3~8.25の範囲であった。地点ごとに結果を見ると、地点3の重金属類の溶出量が最も多く、特にCr、Mn、Ni、Cu、Zn、Cdの溶出が最大となった。次に地点2での溶出が多く、特にCoとPbの溶出が顕著にみられた。地点1はFeとAsの溶出量が3地点中最大であったが、その他重金属類の溶出量は少なく、地点3の0.1倍~0.4倍程度であった。
試料から溶出した重金属類とpH、硫酸イオン濃度の関連性を調べるために相関分析を行った。重金属類のうちMn、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、Pbが相互に正の相関(r > 0.52)を示していた。pHとAs以外の重金属類には負の相関(r < -0.45)が確認された。硫酸イオンと重金属類のうちMn、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、Pbに正の相関(0.42 < r <0.78)が確認された。一方で、重金属類と硫酸イオンの関係を地点ごとにみると、全地点の相関分析と異なる結果が確認された。地点1、2では硫酸イオンとCr、Fe、As以外の重金属類には弱い正の相関が確認されたが(0.07 < r < 0.6)、地点3では両者に強い正の相関が確認された(0.44 < r < 0.94)。坑廃水への重金属類の溶出機構として、硫化物の酸化とそれに伴うpHの減少が知られている。地点3の重金属類と硫酸イオンおよびpHに比較的強い相関が確認されたことから、硫化物の溶解が重金属類の溶出を規定する要因の一つであると考えられる。一方で、地点1と地点2では硫酸イオンと重金属類の強い相関が見られないことから、固相中の重金属類は硫化物以外の形態で存在していると推測される。46号試験の結果と重金属類の相関分析の結果から、ズリに含まれる重金属類の化学形態が地点ごとに異なることが示唆された。今後はコア試料の全量分析などを実施し、重金属類濃度や含有鉱物の違いからも、本研究のズリ堆積場における重金属類の溶出に関わる因子について検討していく。