日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-SC 社会地球科学・社会都市システム

[H-SC06] 地球温暖化防⽌と地学(CO2地中貯留・有効利⽤、地球⼯学)

2022年5月24日(火) 13:45 〜 15:15 展示場特設会場 (2) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:徂徠 正夫(国立研究開発法人産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)、コンビーナ:薛 自求(公益財団法人 地球環境産業技術研究機構)、愛知 正温(東京大学大学院新領域創成科学研究科)、コンビーナ:今野 義浩(The University of Tokyo, Japan)、座長:愛知 正温(東京大学大学院新領域創成科学研究科)

14:30 〜 14:45

[HSC06-04] マニフォールド法を用いた変形-水圧連成解析によるCO2貯留サイトの地震応答解析 -水平構造と背斜構造との比較-

*堀川 滋雄1、佐々木 猛1、橋本 励1、楠瀬 勤一郎2、橋本 涼太3 (1.サンコーコンサルタント株式会社、2.産総研、3.広島大学)

キーワード:地震応答解析、変形-水圧連成解析、マニフォールド法、CO2貯留サイト

巨大地震は持続時間が長く強い地震波を引き起こす.例えば2011年東北地方太平洋沖地震では強振動の継続時間は6分以上で,長周期の地震波は日本列島の広い範囲で大きな変位を引き起こした.CO2地中貯留サイトの地震時における安定性を事前に評価することは,日本においてCCS事業を進めるなかで社会的受容性の観点からも重要な問題の1つであるものと考えられる.しかし深部の流体飽和層に対するこのような長周期の強振動の影響に関する研究事例はあまり見当たらない.
筆者らは巨大地震が起こった際に地下深部で発生する地盤変形と流体移動に伴って貯留層内での間隙水圧が上昇した場合に,遮蔽層あるいは貯留層の健全性が損なわれるか否かを評価することを目的に,マニフォールド法(=NMM)を用いて地盤変形と間隙水圧の動的連成解析法を開発し,地震時の安定性評価に取り組んでいる1).本解析の定式化についての説明は2年前に紹介した.本報告ではこの手法を水平構造モデルと背斜構造モデルに適用し,地震時の安全率応答について検討した結果を報告する.
NMMで使用した水平構造モデルと背斜構造モデル,および境界条件を図1に示す.モデルの幅は2km,深さは1.7kmである.上部境界はドレーン境界,左右側面は粘性境界,底辺は固定境界である(図1).モニター要素はLayer8(CO2貯留層)とLayer4(キャップロック)に設定した.入力地震波形は中越地震(2004年)で得られた観測波(防災科研K-net小千谷)の加速度記録を適用した(図2). 表1に解析に用いた物性値を示す.図3はキャップロックとCO2貯留層のモニター要素における水平構造モデルと背斜構造モデルの間隙水圧応答を示す.間隙水圧応答の最大振幅は,背斜構造モデルの方が同等か若干大きい.また,水平構造モデルのほうが時間の経過とともに収束しやすい.図4はキャップロックとCO2貯留層のモニター要素における局所安全率応答を示す.水平構造モデルの局所安全率応答は背斜構造モデルよりも小さく,特に19秒以降で小さくなっている.

1) Sasaki, T., Horikawa, S., Kusunose, K., Hashimoto, R.:Seismic Response in the Hydraulic-Mechanical Coupling Analysis of a CCS Site Model by NMM, ARMA20-1530,American Rock Mechanics Association, 2020.