日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-SC 社会地球科学・社会都市システム

[H-SC06] 地球温暖化防⽌と地学(CO2地中貯留・有効利⽤、地球⼯学)

2022年5月24日(火) 15:30 〜 17:00 展示場特設会場 (2) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:徂徠 正夫(国立研究開発法人産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)、コンビーナ:薛 自求(公益財団法人 地球環境産業技術研究機構)、愛知 正温(東京大学大学院新領域創成科学研究科)、コンビーナ:今野 義浩(The University of Tokyo, Japan)、座長:徂徠 正夫(国立研究開発法人産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)

15:45 〜 16:00

[HSC06-08] Seasonal difference of increase in DIC and pCO2 of seawater due to CO2 leakage

*内本 圭亮1,2渡辺 雄二1,2三角 和弘3坪野 考樹3津旨 大輔3末国 次朗1,2薛 自求1,2 (1.二酸化炭素地中貯留技術研究組合、2.公益財団法人地球環境産業技術研究機構、3.一般財団法人電力中央研究所)

キーワード:海底下CO2地中貯留、CO2 leakage、季節変動、生物影響

CO2が海に漏出すると海水のCO2分圧(pCO2)や全炭酸(DIC)など海水の二酸化炭素濃度指標の値が大きくなる。そのため、日本でCO2の海底下地中貯留を行う場合、海水の二酸化炭素濃度指標の監視をすることが法令により決まっている。監視は「季節的な二酸化炭素濃度の変化を勘案した適当な時期に1年に1回の頻度」で行うことが求められている。本研究では、海洋シミュレーションの結果を基にして、「適当な時期」について考察する。また、pCO2の増加による生物影響のデータを取りまとめ、CO2漏出による生物影響についても考察する。シミュレーションでは、CO2漏出によるDICの増加分とみなしたパッシブトレーサーを一定の放出率で苫小牧沖の海底から連続的に放出した。結果は、トレーサー濃度は夏に最も高くなり冬に最も低くなるため、監視は夏に行うのが適当であることが示された。夏は成層によりトレーサーが底層にたまりやすく、冬は鉛直混合により鉛直に広がりやすい。また、トレーサー放出点では水平流速が冬の方が夏よりも大きかった。すなわち、鉛直および水平の流れによる移流拡散により、トレーサー濃度は夏に最も高くなり冬に最も低くなるということが示された。トレーサー濃度をpCO2の増分に変換すると、夏と冬の差はより一層顕著になる。これは、他の条件が同じであれば、DICの値が同じでも水温が高いほどpCO2が高くなるためである。したがって、万が一CO2漏出が起きると、夏の方が生物影響が大きくなることが示唆される。季節ごとに一定の自然状態のpCO2値を仮定して、1,000, 10,000, 100,000トン/年の漏出率の場合のpCO2の増加を計算し、生物影響の見積もりを行ったところ、生物影響の閾値を超えるのは100,000トン/年のみであった。ただし、本研究で用いたモデルの水平解像度は粗いことに注意が必要である(1/120°)。