日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-SC 社会地球科学・社会都市システム

[H-SC06] 地球温暖化防⽌と地学(CO2地中貯留・有効利⽤、地球⼯学)

2022年6月1日(水) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (15) (Ch.15)

コンビーナ:徂徠 正夫(国立研究開発法人産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)、コンビーナ:薛 自求(公益財団法人 地球環境産業技術研究機構)、愛知 正温(東京大学大学院新領域創成科学研究科)、コンビーナ:今野 義浩(The University of Tokyo, Japan)、座長:薛 自求(公益財団法人 地球環境産業技術研究機構)、今野 義浩(The University of Tokyo, Japan)、愛知 正温(東京大学大学院新領域創成科学研究科)、徂徠 正夫(国立研究開発法人産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)

11:00 〜 13:00

[HSC06-P07] CCSコスト試算ツールの開発

*末国 次朗1,2渡辺 雄二1,2中島 崇裕1,2、沖本 竜太1,2薛 自求1,2 (1.二酸化炭素地中貯留技術研究組合、2.公益財団法人地球環境産業技術研究機構)

キーワード:経済性評価、ビジネスモデル、全体最適、DBMS、WEBシステム、プログラミング言語

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、官民ともCCSへの期待が高まりつつある。こうした中、CO2の排出に関連する企業(事業者)がCCSの実施に踏み切るかどうかは、経営者の判断に委ねられている。企業にとっては、CCSの実施により、自らが排出するCO2を、地中に安全かつ安定的に隔離することが目的であるが、一方で経済的な負担の少ない選択肢を選ぶことが、経営戦略上有利であることはいうまでもない。
 CCSの経済性は、そのライフタイム全体に要する費用の他、企業の負担を減らす仕組みとして補助金等のインセンティブがある。これら両者のバランスを考慮しながら、企業にとって如何に魅力的なビジネスモデルを提案できるかが、今後のCCS推進の鍵になると考えられる。
 CCSの費用算出に際して問題となるのが、想定可能なケースが多数存在することである。すなわち、排出源が確定していても、年間の貯留量や回収方法、輸送距離、液化方式、圧入期間などを変えれば費用が変わり、さらに、どのようなケースを想定するかによってインセンティブも変化する。このことは、CCSにおける特定工程の最適化が全体の最適化には必ずしも繋がらないことを意味しており、最適解を得るためには、実現可能な複数ケースの比較検討が、最善策であると考えている。
 上記の理由により、当チームでは、CCSの経済性評価のうち、CCSによって発生する費用を様々な角度から計算できるツールの開発を進めている。その目的上、多数のケースを効率的に処理する必要があることから、従来までの個別に計算する方式に加え、複数ケースの自動実行や、指定したレンジで特定のパラメータを変えながら感度解析を行う機能等をツールに搭載する予定である。

 今回開発するツールには上記の他にも幾つかの特徴があり、以下にそれらを記す。
 1)プログラミング言語による開発:これにより、ユーザビリティに優れたツールを実現する。既存のExcelツールでは表に諸元を入力する際などで悩む場面が多かったが、わかり易いユーザインターフェイスの構築によりその改善を図る。
 2)DBMS(database management system)の搭載:ユーザ毎の検討ケースやデータの管理が、DBMSによって安全かつ確実に行える他、データの管理部分と計算エンジンとを分離することができる。これによって、選択した複数ケースの自動計算や繰返し計算が行えるほか、計算エンジンが独立しているため、計算手法の修正や追加が容易にできる。
 3)WEBシステムとして開発:特別なソフトや更新等の操作は必要なく、ブラウザだけで利用できる。また、計算は全てサーバ上で処理されるため、ユーザPCの能力はツールに影響しない。

 開発スケジュールについては、2022年度は先ず新しいコンセプトのもと、これまでに蓄積された情報を最大限に活用し、年度内に基本的な機能を搭載したツールを試作する。2023年度はこれに、自動計算等の新たな機能による拡充を図るとともに、最新の情報や知見を取り入れ、CCSコスト算定ツールとして完成させる計画である。
 本発表では、開発するツールの設計思想や搭載する機能等について紹介する。