日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT16] Geographic Information Systems and Cartography

2022年6月3日(金) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (17) (Ch.17)

コンビーナ:小口 高(東京大学空間情報科学研究センター)、コンビーナ:若林 芳樹(東京都立大学大学院都市環境科学研究科)、Liou Yuei-An(National Central University)、コンビーナ:Estoque Ronald C.(Center for Biodiversity and Climate Change, Forestry and Forest Products Research Institute, Japan)、座長:小口 高(東京大学空間情報科学研究センター)、若林 芳樹(東京都立大学大学院都市環境科学研究科)、Yuei-An Liou(National Central University)、Ronald C. Estoque(Center for Biodiversity and Climate Change, Forestry and Forest Products Research Institute, Japan)

11:00 〜 13:00

[HTT16-P04] 山地小流域の土層厚が洪水流出に与える影響の検討

*廣木 颯太朗1浅野 友子2小口 高3 (1.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻、2.東京大学、3.東京大学空間情報科学研究センター)

キーワード:洪水流出、土層厚、地下水、山地小流域

近年各地で激甚化する豪雨により、河川流量の急激な増加に伴う洪水が頻発している。一般的に河川水は、山地斜面に降った雨水が一旦斜面内部を経由し、最終的に河川に流出することで形成される。これまで、斜面内部における水の流れの過程を解明する研究が数多く行われ、降雨時には表土層中に発達したパイプ中の選択的な流れが卓越することなどが明らかにされてきた。しかし、不均一な土層厚の分布が洪水流出に及ぼす影響については、研究事例が少なく、統一的な見解は未だ得られていない。本研究の目的は、土層厚が洪水流出に与える影響を調査し、その関係性を明らかにすることである。
 研究フィールドとして、東京大学大学院農学生命科学研究科演習林の一つ、秩父演習林に位置するバケモノ沢(砂岩泥岩互層/41.1ha)を選んだ。ここでは、河川流量と降水量の連続観測が行われている。また、尾根沿いと谷沿いで土層厚や土壌水分特性を調査した。
 まず面積などの流域特性の解析にQGISを利用した。国土地理院が提供する10-m DEMから、小流域の面積を算出した。また、土層厚データと10mDEMを組み合わせることで、土層厚の面的な分布や基岩面の標高を推定した。次に土層からの流出量を計算するため、物理法則に則った鉛直飽和不飽和浸透流の計算が可能なソフトウェアHYDRUS-1Dを用いた。このソフトウェアに降水量や土壌特性、土層厚を入力することで、土層下端からの流出量を有限要素法に基づき計算することができる。今回は、洪水時の流出が土層内の鉛直浸透によって説明できると仮定し、実際の流出波形と計算された流出波形を比較した。
 バケモノ沢の谷沿いと尾根沿いでは、土層厚がそれぞれ0.5~1.5m、2~3mと異なり、土壌水分特性も大きく異なった。土層厚を0.5~3mの間で変化させると、計算流出量のハイドログラフには顕著な違いが認められた。具体的には、土層厚が大きいほど、土層下端での鉛直浸透流の強度は小さくなり、地表面における降水ピークとの時間差も拡大した。一方で、谷沿いと尾根沿いの土壌水分特性をそれぞれ用いて解析を行い、流出ハイドログラフの違いを調べたが、計算流出量に大きな差は認められなかった。これは、土壌水分特性ではなく土層厚が河川への流出波形に大きな影響を及ぼす可能性を示唆する。
 今後は、同演習林に属し、地質・地形・流域面積等が異なる2つの小流域、千葉演習林袋山沢(砂岩泥岩互層/2.0ha)と生態水文学研究所白坂南谷・北谷(風化花崗岩/2.6ha)でも同様の手法で解析を実施していく。バケモノ沢に比べて、流域内の詳細な土層厚分布が既に分かっているため、実際の地下水の流れをより正確に再現できると期待される。また、先行研究により、どの流域でも土層より下にある基岩に、多くの地下水が浸透していることが明らかになっているため、土層と基岩の関係を検討する予定である。