日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT18] 環境トレーサビリティ手法の開発と適用

2022年5月27日(金) 13:45 〜 15:15 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)、コンビーナ:Ki-Cheol SHIN(総合地球環境学研究所)、山下 勝行(岡山大学大学院自然科学研究科)、座長:山下 勝行(岡山大学大学院自然科学研究科)、SHIN Ki-Cheol(総合地球環境学研究所)

13:45 〜 14:00

[HTT18-01] 環境トレーサビリティ手法としての多元素同位体分析の活用

*陀安 一郎1SHIN Ki-Cheol1鷹野 真也1 (1.総合地球環境学研究所)

キーワード:安定同位体、多元素同位体地図、環境トレーサビリティ

水、大気、生物、土壌など生態系を構成する種々の要素のなかには、元素の安定同位体比という指紋が内在されている。この指紋情報がもつトレーサビリティ機能を用いると、さまざまな地域や時間のスケールを対象とする地球環境問題の解決に資する研究を行うことができる可能性がある。元素の安定同位体比は、元素の濃度とともに用いることにより、環境中の物質の流れを追跡することに加え、生態系の構造を記述することができる。多元素の安定同位体比の時空間変動は、地域レベルから地球規模に及ぶ地球システムを研究するために使用することができる。この情報は、さらに人々が水、食糧、環境保全などの重要な意思決定を行う上で活用することができる可能性があり、これらは人間社会の持続可能性にとっても活用しうる。
総合地球環境学研究所では、これらの観点から「同位体環境学共同研究」という共同研究の枠組みを作り、全国の研究者と機器の共同利用を通じて多元素の安定同位体分析を元にした環境の研究を行なっている。2017年度から2019年度まで行なわれた「環境研究における同位体を用いた環境トレーサビリティー手法の提案と有効性の検証」の研究においては、環境研究において環境トレーサビリティの概念をどのように利用するかについての方法論を研究した。その結果、学際的プロセスにおけるトレーサビリティ手法の役割と利用可能性は対象とする関係者で異なり、「多元素同位体地図」の共同制作は地域環境の変化を理解し説明するのに効果的な結合ツールとして機能した。2020年度からは、特定推進研究「環境トレーサビリティに基づく研究基盤の応用」として、作成したホームページ「同位体環境学がえがく世界(https://www.environmentalisotope.jp)」を、同位体手法を用いた研究の提供者と利用者をつなぐ相互プラットフォームとして活用している。本発表では、現在の研究の進展を発表するとともに、今後利用者とどのような共同研究を進めていくかについて議論する。