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[HTT18-10] 湖沼堆積物の安定同位体組成を用いたモンゴル高原南部の環境変動
キーワード:モンゴル、湖沼堆積物、安定同位体組成
モンゴル高原は、1900~2014年の期間において北半球の永久凍土地帯で最も温暖化した地域であり、気候変動に応答した陸域環境変動を理解することは重要である。本研究は、モンゴル・ゴビ砂漠西部のブンツァーガン湖で掘削した不攪乱湖底堆積物コアの安定同位体組成分析を通じて古環境変動解析を行った。
堆積物の年代は、Ge半導体検出器を用いて決定したPb-210とCs-137濃度をもとに、210Pbのフラックスが常に一定であるという仮定をおいたCRS(constant rate of supply)をもとに決定した。Cs-137が最大を示す1963年の層準は、CRSモデルの堆積年代と良い一致を示した。堆積物の全窒素・全有機炭素の含有量(TN, TOC)と安定同位体比(δ15NTN, δ13CTOC)は、元素分析計とCN-IRMSを用いて決定した。但し、TOC分析では、6MのHClによる脱炭酸塩処理を施した試料を用いた。堆積物の全硫黄及び硫化物の安定硫黄同位体比(δ34STS, δ34SCRS)は、元素分析計を用いたTS含有量の定量と共に、S-IRMS分析を通じて定量した。
δ13CTOCは、1740年から2016年の期間を通じて–26.7‰から–25.3‰の範囲で変動を示した。TOCは1%から6%、C/N比は4から16へ増加傾向を示す。δ13CTOCとC/N比の間には相関性が認められなかったことから、1740年から2016年におけるTOCの増加は湖内の植物プランクトンの生産量と陸上高等植物(C3植物)の湖への寄与が共に増大したものと考えられる。
δ15NTNは、期間を通じて4.5‰から6.2‰の範囲で変動した。先行研究で示されるモンゴル高原北部・セレンガ川流域の表層堆積物δ15NTNは4.6‰から6.8‰(Hyodo et al. 2012)、バイカル湖の現生植物プランクトンは4.2±0.6‰(Yoshii et al. 1997, 1999)と報告されている。このことからTNは、TOCと同様に現地性と異地性に由来すると見なすことができる。一方で、δ15NTNとC/N比の間には弱い正の相関性が見られることから(R = 0.42)、流域からの栄養塩の湖への寄与が支配的であると考えられる。
δ34STSは、期間を通じて–15‰から+6.7‰へ徐々に上昇した。流入河川のSO42–のδ34Sは6.2‰、湖水は31‰であることから、湖水のSO42–のδ34Sは地下水流入によって支配されている。また、堆積物最表層δ34STSは、湖水のSO42–のδ34Sに比べて約23‰低い値を示した。これは、硫酸イオンの制限されない条件での硫酸還元による同位体分別効果の結果と良い一致を示す(Habicht et al. 2002)。硫黄同位体マスバランスの計算から、硫酸塩と硫化物のδ34Sの差(ΔSal–CRS)は現在にかけて上昇傾向を示した。この上昇は、現行の温暖化に伴う、湖水の塩濃度の増加と集水域の活動層における硫酸還元で生成される重たい硫黄同位体組成から成るSO42–の流入によると推察される。
堆積物の年代は、Ge半導体検出器を用いて決定したPb-210とCs-137濃度をもとに、210Pbのフラックスが常に一定であるという仮定をおいたCRS(constant rate of supply)をもとに決定した。Cs-137が最大を示す1963年の層準は、CRSモデルの堆積年代と良い一致を示した。堆積物の全窒素・全有機炭素の含有量(TN, TOC)と安定同位体比(δ15NTN, δ13CTOC)は、元素分析計とCN-IRMSを用いて決定した。但し、TOC分析では、6MのHClによる脱炭酸塩処理を施した試料を用いた。堆積物の全硫黄及び硫化物の安定硫黄同位体比(δ34STS, δ34SCRS)は、元素分析計を用いたTS含有量の定量と共に、S-IRMS分析を通じて定量した。
δ13CTOCは、1740年から2016年の期間を通じて–26.7‰から–25.3‰の範囲で変動を示した。TOCは1%から6%、C/N比は4から16へ増加傾向を示す。δ13CTOCとC/N比の間には相関性が認められなかったことから、1740年から2016年におけるTOCの増加は湖内の植物プランクトンの生産量と陸上高等植物(C3植物)の湖への寄与が共に増大したものと考えられる。
δ15NTNは、期間を通じて4.5‰から6.2‰の範囲で変動した。先行研究で示されるモンゴル高原北部・セレンガ川流域の表層堆積物δ15NTNは4.6‰から6.8‰(Hyodo et al. 2012)、バイカル湖の現生植物プランクトンは4.2±0.6‰(Yoshii et al. 1997, 1999)と報告されている。このことからTNは、TOCと同様に現地性と異地性に由来すると見なすことができる。一方で、δ15NTNとC/N比の間には弱い正の相関性が見られることから(R = 0.42)、流域からの栄養塩の湖への寄与が支配的であると考えられる。
δ34STSは、期間を通じて–15‰から+6.7‰へ徐々に上昇した。流入河川のSO42–のδ34Sは6.2‰、湖水は31‰であることから、湖水のSO42–のδ34Sは地下水流入によって支配されている。また、堆積物最表層δ34STSは、湖水のSO42–のδ34Sに比べて約23‰低い値を示した。これは、硫酸イオンの制限されない条件での硫酸還元による同位体分別効果の結果と良い一致を示す(Habicht et al. 2002)。硫黄同位体マスバランスの計算から、硫酸塩と硫化物のδ34Sの差(ΔSal–CRS)は現在にかけて上昇傾向を示した。この上昇は、現行の温暖化に伴う、湖水の塩濃度の増加と集水域の活動層における硫酸還元で生成される重たい硫黄同位体組成から成るSO42–の流入によると推察される。