11:00 〜 13:00
[HTT18-P04] 京都市内の交通量が異なる採取地点における中低木街路樹の光合成機能と葉表面における汚染度の評価
キーワード:炭素安定同位体比、環境ストレス、光合成
【目的】
街路樹には大気汚染物質を吸着することによる大気の浄化、二酸化炭素の固定、緑陰形成による温度の上昇の防止など様々な機能が期待されている。しかし道路沿いに植栽されている街路樹は多様なストレスにさらされている。例えば自動車の排気ガスや粉塵の付着は植物の生理的側面に悪影響を及ぼす。粉塵は付着することによって葉で吸収される光の量を減少させ、排気ガスの成分には気孔を閉鎖させる作用があるものもある。したがって、都市環境によるストレスが長期間にわたって与えられると光合成などの生理的側面が抑制され街路樹が期待されている機能を果たせなくなることが考えらえる。しかし植物のストレス耐性には大きな種間差があるため、都市環境で生じる様々なストレスに対する耐性が高い樹種もあると予想される。また植物には葉の裏面などにトライコーム(毛状突起)が見られる種がある。トライコームがあることで粉塵の吸着を通して植物の生理的側面に影響を及ぼすことも考えられる。
そこで本研究では交通量の異なる地点で採取したトライコームを持つ種と持たない種の街路樹ついて光合成速度などの生理的特性を評価し、街路樹として期待されている機能を持つ樹種を選定することの一助とすることを目標とした。
【材料および方法】
都市の環境ストレスの要因として車両の往来による排気ガスや粉塵に着目した。日中の交通量が10000台程度の2採取地点、24000台程度の1採取地点、40000台以上の採取地点の計4採取地点で街路樹の葉を採取した。サンプル採取は6月から8月にかけて行い、実験植物は京都市内で広く植栽されている低木のヒラドツツジ(Rhododendron × pulchrum)とシャリンバイ(Rhaphiolepis indica var. umbellata)を用いた。調査地で採取した街路樹の葉で光合成速度(A400)、気孔コンダクタンス(gs)を測定した。測定したデータからA-Ci曲線を作成し、最大カルボキシル加速度(Vcmax)、チラコイド膜の電子伝達速度(J)及び水利用効率(WUEi)を算出した。また葉の表面の汚れの付着や傷害の程度、炭素安定同位体分別による長期の水利用効率を算出した。
gsは気孔の開き具合の指標であり、大きければ気孔が開いていることを示している。またWUEiは蒸散によって失われた水分に対して得た二酸化炭素量を表しているパラメータである。ストレスなどによって気孔が閉じることで蒸散量が低下する影響を強く受けて高い値となるため、WUEiはストレスの指標となる。
【結果】
ツツジでは6月のA400とWUEiは交通量の多い地点では低下しており、炭素安定同位体分別は高くなっていた。シャリンバイでは6月のVcmax、Jと炭素安定同位体分別は交通量の多い地点では高くなった。ツツジでは交通量の増加とともに葉の表面の汚れの付着や傷害の程度が高まる傾向にあったがシャリンバイでは傾向が見られなかった。
8月の測定ではどちらの樹種でも交通量の増加とともに変化傾向を示すパラメータは見られなかった。
【考察】
生理的側面について両方の樹種で6月に調査地間で異なる結果を示したパラメータが多かった。特にツツジの光合成速度は交通量と負の相関が見られ、車両の往来の光合成機能への影響を示唆した。しかしながら8月になると多くのパラメータで有意な差が見られなくなった。このことから新芽が成長するにつれて周囲のストレスに対して耐性ができたことが示唆される。6月の測定では交通量の増加とともにツツジのA400とWUEiが低くなったことから交通量の多い採取地点ではツツジの生化学的機能が傷害を受けている可能性がある。また葉の表面の汚れの付着や損傷はトライコームが存在するツツジでだけ見られたことから、トライコームがツツジの生理的側面に悪影響を及ぼす要因の一つである可能性が考えられる。
街路樹には大気汚染物質を吸着することによる大気の浄化、二酸化炭素の固定、緑陰形成による温度の上昇の防止など様々な機能が期待されている。しかし道路沿いに植栽されている街路樹は多様なストレスにさらされている。例えば自動車の排気ガスや粉塵の付着は植物の生理的側面に悪影響を及ぼす。粉塵は付着することによって葉で吸収される光の量を減少させ、排気ガスの成分には気孔を閉鎖させる作用があるものもある。したがって、都市環境によるストレスが長期間にわたって与えられると光合成などの生理的側面が抑制され街路樹が期待されている機能を果たせなくなることが考えらえる。しかし植物のストレス耐性には大きな種間差があるため、都市環境で生じる様々なストレスに対する耐性が高い樹種もあると予想される。また植物には葉の裏面などにトライコーム(毛状突起)が見られる種がある。トライコームがあることで粉塵の吸着を通して植物の生理的側面に影響を及ぼすことも考えられる。
そこで本研究では交通量の異なる地点で採取したトライコームを持つ種と持たない種の街路樹ついて光合成速度などの生理的特性を評価し、街路樹として期待されている機能を持つ樹種を選定することの一助とすることを目標とした。
【材料および方法】
都市の環境ストレスの要因として車両の往来による排気ガスや粉塵に着目した。日中の交通量が10000台程度の2採取地点、24000台程度の1採取地点、40000台以上の採取地点の計4採取地点で街路樹の葉を採取した。サンプル採取は6月から8月にかけて行い、実験植物は京都市内で広く植栽されている低木のヒラドツツジ(Rhododendron × pulchrum)とシャリンバイ(Rhaphiolepis indica var. umbellata)を用いた。調査地で採取した街路樹の葉で光合成速度(A400)、気孔コンダクタンス(gs)を測定した。測定したデータからA-Ci曲線を作成し、最大カルボキシル加速度(Vcmax)、チラコイド膜の電子伝達速度(J)及び水利用効率(WUEi)を算出した。また葉の表面の汚れの付着や傷害の程度、炭素安定同位体分別による長期の水利用効率を算出した。
gsは気孔の開き具合の指標であり、大きければ気孔が開いていることを示している。またWUEiは蒸散によって失われた水分に対して得た二酸化炭素量を表しているパラメータである。ストレスなどによって気孔が閉じることで蒸散量が低下する影響を強く受けて高い値となるため、WUEiはストレスの指標となる。
【結果】
ツツジでは6月のA400とWUEiは交通量の多い地点では低下しており、炭素安定同位体分別は高くなっていた。シャリンバイでは6月のVcmax、Jと炭素安定同位体分別は交通量の多い地点では高くなった。ツツジでは交通量の増加とともに葉の表面の汚れの付着や傷害の程度が高まる傾向にあったがシャリンバイでは傾向が見られなかった。
8月の測定ではどちらの樹種でも交通量の増加とともに変化傾向を示すパラメータは見られなかった。
【考察】
生理的側面について両方の樹種で6月に調査地間で異なる結果を示したパラメータが多かった。特にツツジの光合成速度は交通量と負の相関が見られ、車両の往来の光合成機能への影響を示唆した。しかしながら8月になると多くのパラメータで有意な差が見られなくなった。このことから新芽が成長するにつれて周囲のストレスに対して耐性ができたことが示唆される。6月の測定では交通量の増加とともにツツジのA400とWUEiが低くなったことから交通量の多い採取地点ではツツジの生化学的機能が傷害を受けている可能性がある。また葉の表面の汚れの付着や損傷はトライコームが存在するツツジでだけ見られたことから、トライコームがツツジの生理的側面に悪影響を及ぼす要因の一つである可能性が考えられる。