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[HTT18-P08] 保美・伊川津貝塚より出土した古人骨のSr同位体分析による移入者の判別
キーワード:ストロンチウム、同位体、人骨
愛知県の渥美半島にある縄文時代後・晩期の貝塚遺跡からは,多数の古人骨が出土している。その中でも保美貝塚と伊川津貝塚には,盤状集積墓や集積墓などの独特の埋葬形態が存在する。盤状集積墓は,複数の個体の骨から構成される二次葬であり,長骨を方形に組んでいることが特徴である。集積墓は,解剖学的位置を保っていない複数の個体がひとつの土坑に埋葬されている二次葬の事例である。これらの埋葬の意義を考察する一助とするために,古人骨のSr同位体分析による移入者の判別を試みることを研究の目的とした。資料は,保美貝塚から発掘された古人骨の歯のエナメル質と骨資料の合計22点,伊川津貝塚の資料が合計30点である。それらの骨や歯のSr同位体比を測定した。その結果,保美貝塚の資料については,盤状集積墓の方が単独葬よりも歯のエナメル質のSr同位体比が高い傾向にあった。伊川津貝塚においては,単独葬の中にも値のばらつきが大きかったが,盤状集積墓と集積墓の中にかなり高い値を示す個体が含まれていた。それらは,骨の値や遺跡周辺の現生植物,動物骨の値よりも高い傾向にあり,幼少期に遺跡とは異なる場所の資源を利用した可能性が示唆された。よって,盤状集積墓や集積墓として埋葬された個体の中には,ほかの地域で得られた食物を獲得した可能性や,移入者である個体が含まれている可能性が示唆された。