日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT18] 環境トレーサビリティ手法の開発と適用

2022年5月29日(日) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (12) (Ch.12)

コンビーナ:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)、コンビーナ:Ki-Cheol SHIN(総合地球環境学研究所)、山下 勝行(岡山大学大学院自然科学研究科)、座長:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)、SHIN Ki-Cheol(総合地球環境学研究所)、山下 勝行(岡山大学大学院自然科学研究科)

11:00 〜 13:00

[HTT18-P11] 極微量Srの同位体比測定について

*SHIN Ki-Cheol1 (1.総合地球環境学研究所)

キーワード:ストロンチウム、同位体比測定、極微量

放射起源同位体を持つSr(87Sr/86Sr)は地理的な位置情報を持っているため、トレーサーとして生物の移動履歴の追跡や農産物の産地判別などに成功的に用いられてきた。そのため様々な分野でトレーサーとしての可能性について検討が進んでおり、今までは考えていなかったものが試料として測定対象になることも増えてきた。数㎜程度の小さな昆虫や虫などもその例の一つである。問題はこのような生物はSrに富む炭酸カルシウムを主とする骨格を持たない場合も多く、Sr同位体比測定に必要な十分なSr含有量が持ったない場合もある。このような試料に対しては安定した測定が困難であるため微量のSrでも安定して測定できる手法開発が必要である。
今回は地球研に設置されている3台の装置(TIMS:Triton, Triton XT、MC-ICP-MS:Neptune)を用いて微量のSr量でどれだけ正確な同位体比の測定ができるかを確認し、その報告を行う。
高精度分析で必要とするSr量はTIMSでは約100ngで外部精度5ppm程度の精密測定ができる。また、MC-ICP-MSでは200ng(200ppb溶液1ml)で外部精度20ppmの精密測定ができる。微量測定を行う前に同位体標準物質であるNIST SRM987を用いて測定条件を変えながら繰り返し測定し、その結果を確認した。88Srの信号強度を0.1V, 0.3V, 0.5Vに変化させて安定性を確認し、その結果を報告する。
微量試料としてはSr 1ngに対して検証を行った。安定した測定値を出すためにはTritonでは0.5V以上、Triton XTでは0.3V以上、Triton XTで1013Ω Amplifierを使う場合には0.1Vでも可能であることが確認できた。MC-ICP-MSでは脱溶媒装置を使ってSr濃度2ppb溶液(2ng)1mlで測定を行ったが、アルゴンガス中に不純物として存在しているクリップトン(Kr)による干渉によって大きくずれた結果を得られた。