日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT20] 浅部物理探査が目指す新しい展開

2022年5月25日(水) 13:45 〜 15:15 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:尾西 恭亮(国立研究開発法人土木研究所)、コンビーナ:横田 俊之(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、磯 真一郎(公益財団法人 深田地質研究所)、コンビーナ:木佐貫 寛(応用地質株式会社)、座長:木佐貫 寛(応用地質株式会社)、磯 真一郎(公益財団法人 深田地質研究所)

15:00 〜 15:15

[HTT20-06] 筑波山南麓神郡地区における単点微動測定H/Vスペクトルを用いた浅部地盤マッピング

*稲崎 富士、林 宏一1 (1.ジオメトリクス)

キーワード:単点微動測定、H/Vスペクトル、表層地盤、筑波山

微動の水平動成分と鉛直動成分の周波数スペクトル比(H/Vスペクトル)から表層地盤の地震時増幅特性を推定することが可能であり,広域的な基盤構造をマッピングする簡便な現場測定手法として活用されてきた.本発表では筑波山南麓神郡地区において実施した稠密単点微動測定により得られたH/Vスペクトルの卓越周波数の空間分布とS波速度構造インバージョン結果について報告する.
測定対象サイトは,筑波山南麓斜面と同斜面脚部:つくば市神郡地区の堆積低地を含む東西約4km,南北約3kmの領域である.測定領域の北半部は筑波山南麓斜面であり,主として岩屑崩落物で構成され基盤岩類は伏在している.南側の神郡地区は三方向を山地で境され,西側に緩く傾斜する小規模な山間堆積低地として特徴づけられる.河川整備および土地改良を目的として実施されたボーリングデータ等から,基盤岩が浅所に伏在していると推定されている.
微動測定には応用地質社製の3成分独立型地震波形測定システム:Atomを使用した.同システムは3成分速度型地震計(固有周波数2Hz)と3チャンネルのGPS内蔵データロガー(McSEIS-AT)より構成される.サンプリング間隔は4msecとし,各点で15-30分間程度の微動を測定した.これまでの測定結果から,使用した速度型地震計は0.1-50Hzの周波数帯域において常時微動測定に使用可能であることを検証済みである.
現地測定は2021年12月~2022年2月にかけて実施した.この間に対象サイト内160箇所において順次微動データを取得した.オンサイトあるいは室内で測定システムをWi-Fi接続し,測定データをPCにダウンロードしGeometrics社が提供する専用処理解析ソフトウエアシステムSeisImagerを用いてH/Vスペクトルを求めた.解析結果は同社が運営する公開型データベース(https://SeisImager.com)にアップロードした.このデータベースでは測定結果をアップロードしてマップ上に表示するだけでなく,誰もが個別サイトのH/Vスペクトルを閲覧することもデータをダウンロードすることも可能である.
H/Vスペクトル比のピーク周波数を0.1-30Hz間で求め,それを地図上にプロットした(附図).同図からは神郡堆積低地部のピーク周波数が西に向かって低下すること,低地を取り囲む山麓斜面部では周波数が大きくなるものの筑波山南麓斜面部では高標高部まで相対的にピーク周波数が小さいこと,高周波数を示す測点が局所的に出現すること,などが特徴的である.またH/Vスペクトルを説明可能な速度構造を想定し,理論H/Vスペクトルと比較・チューニングし,表層の概略的な速度層構造を求めた.探査サイト西側の低周波数を示す測点データは,単純な三層構造(V1=180m/s;V2=600m/s;V3=3000m/s:H1=8m;H2=100m)で説明することが可能である.