日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT20] 浅部物理探査が目指す新しい展開

2022年6月2日(木) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (20) (Ch.20)

コンビーナ:尾西 恭亮(国立研究開発法人土木研究所)、コンビーナ:横田 俊之(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、磯 真一郎(公益財団法人 深田地質研究所)、コンビーナ:木佐貫 寛(応用地質株式会社)、座長:横田 俊之(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)、尾西 恭亮(国立研究開発法人土木研究所)

11:00 〜 13:00

[HTT20-P01] 常時微動測定に基づいて推定された福山平野の地下構造とボーリング調査結果との比較

*向井 厚志1 (1.福山市立大学都市経営学部)

キーワード:常時微動測定、福山平野

広島県東部の福山平野は,江戸時代以降の人工的な造成地である。埋立前は芦田川から流れ出す土砂によって緩やかな傾斜の遠浅の海が広がっており,小島や岩礁地帯が点在していた。同地域内では2015年以降,常時微動測定が続けられており,それに基づく稠密な卓越振動数分布および地下構造の推定が行われている。本研究では,推定された地下構造を国土交通省や福山市上下水道局等のボーリング調査データと比較し,推定結果の適切さを検証する。
発表者は,2015年以降,福山平野およびその周辺地域において常時微動測定を断続的に実施してきた。現在,351点の常時微動測定値が蓄積されており,そのH/Vスペクトル比から表層のS波速度や層厚が推定されている(向井,2021)。S波速度の推定値は,いずれの測定点においても350m/s前後であった。この値は,「全国1次地下構造モデル(暫定版)」における福山平野の第1層の地震波速度とほぼ一致している。一方,表層の層厚は,福山平野北部の山岳地域で薄く,海岸線に近い南東側ほど大きな値が推定された。埋立地である福山平野の大部分は40m以上と厚く,南東側の層厚は80m以上であった。また,岩礁地帯の言い伝えが残る地域では,周辺地域と比べて極端に表層が薄くなっていることも明らかにされた。こうした層厚分布の地域的な違いは,埋立前の旧海底面地形に対応していると考えられる。
鎌田(1985)は,福山市で実施されたボーリング調査の標準貫入試験等に基づいて,福山平野の地盤特性を推定した。論文中で公開されている計11点の地質柱状図からN値が30以上となる深さを読み取り,ほぼ同一地点で得られた向井(2021)の層厚と比較すると,両者の間には明瞭な正の相関が得られた。また,鎌田(1985)が推定した東西方向の地質断面図では,福山平野北部の小山東側で表層が分厚くなっているが,向井(2021)の層厚分布にも類似の構造がみられる。
福山平野のボーリング調査資料としては,国土交通省等の国土地盤情報が利用できる。同資料の大部分は芦田川流域に限定されているが,そのN値が30以上となる深さを読み取り,ほぼ同一地点で得られた向井(2021)の層厚と比較すると,両者の間にはやや不明瞭ながらも正の相関がみられた。いずれも,河口に近い南東側ほど大きな値となっており,旧海底面の傾斜に対応した結果となっている。
以上のように,福山平野内の稠密な常時微動測定に基づいて推定された向井(2021)の表層構造はボーリング調査結果と矛盾しないと考えられる。本研究では,福山市上下水道局のボーリング調査資料との比較も行い,推定された表層構造の適切さを検証する。