日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT21] 地理情報システムと地図・空間表現

2022年5月26日(木) 13:45 〜 15:15 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、コンビーナ:田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学)、座長:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学)

13:45 〜 14:00

[HTT21-01] 神戸市における風分布モデルの地図表現

*山川 純次1、奥谷 真帆2 (1.岡山大学大学院自然科学学域、2.岡山大学理学部地球科学科)

キーワード:風分布モデル、クリギング、ベクトル場、QGIS、GNU R、gstat

PM2.5に代表される大気汚染物質の濃度分布の検討において風分布は重要な情報である。風の観測点数は限られているため市区スケールでの風分布モデル(ベクトル場)を得るためには数値シミュレーションを用いるのが一般的であるが,本研究では地球統計学のモデリング手法の一つであるクリギング法を使って兵庫県神戸市における風分布モデルを観測値から推定した。そして得られた風分布モデルをGISで地図表現する手法を検討した。

今回対象とした地域は神戸市で,風観測データは気象庁により公開されている2018年度のデータ(月平均値)を用いた。地球統計解析にはGNU R (R core team, 2022) とクリギング法のパッケージであるgstat (Pebsma, 2004)を使用した。推定グリッドは三次メッシュコード(総務省統計局, 2022)を使用した。地図表現にはQGIS (QGIS Development team, 2022)を使用した。

風観測データの空間依存性をバリオグラムにより推定し,クリギング法により神戸市全域に関する風分布モデルおよびその分散モデルを得た。これらのモデルをQGISを使って地図表現した。これにより神戸市西部に風分布の特異点が把握できた。またこれらのモデルとJPGIS DEM (国土地理院, 2022)を併せて同時期の神戸市におけるPM2.5分布モデルを検討したところ,PM2.5濃度分布は市の西部,東部そして北部で異なる地球科学的メカニズムに基づくことが示唆された。

GISを使った風分布モデルの地図表現により,他の地理情報や地球統計学モデルとの定性的な比較と検討が容易になった。ベクトル場の地図表現は地球惑星科学分野で広く必要とされているため,この手法の普及が期待される。