日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT21] 地理情報システムと地図・空間表現

2022年5月26日(木) 13:45 〜 15:15 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、コンビーナ:田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学)、座長:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学)

14:00 〜 14:15

[HTT21-02] 安価な一周波タイプローカル・エリアRTKシステムとネットワークを使用したリアルタイム精密測量の検証

*那須 仁予1新村 太郎1 (1.熊本学園大学経済学部)

キーワード:低コスト精密測量システム、ローカルエリアRTK-GNSS、地理情報システム

新村・那須(2020, 2021)では安価で手軽なローカル・エリアRTK-GNSS測量システムを構築し検証した結果,数cm以下の精度で安定したデータを得ることができた.本研究では,このシステムを拡張して自動的に,1秒ごとに自動的にRTK測量を実施し,リアルタイムデータの精度と信頼性を検証した.測量は新村・那須(2021)で使用した大学構内の建物や樹木などGNSS衛星受信の障害物がある場所(地上定点)と,すでに基準局が設置され,空が開けていてGNSS衛星受信の障害物が非常に少ない11階建て校舎の屋上(屋上定点)で実施した.地上局ではネットワークの接続状態,気温,相対湿度を同時に測定した.10分間に600個のデータを取得し,10分ごとのデータとして最もratioの高いデータを選んで解析した.
 地上・屋上定点ともに,データが最も集中している値として決めた代表値との差の分布で,約3.0×10-7度に分布が少なくなったギャップがあった.これを正常なfixとミスfix値の境界としてデータ品質を評価した後,品質低下の原因を探り,データ処理段階で全体の品質を向上させる方法を見出した.全体のデータの品質について,ばらつきを判断する標準偏差の大きさと,標準誤差の2倍を誤差範囲とした場合に代表値がその範囲に含まれるかどうかの2つの方法で評価を行った.地上定点では全データの標準誤差はD-GNSSの10倍以上の精度であったが,RTK測量で期待される値としては不十分であった.衛星数15個以下,ratio値9以下のデータをフィルタリングすることで,データの品質と信頼性が十分なレベルまで改善された.屋上定点では,全データの標準誤差が水平・高さ方向ともに1mm程度であり,地上定点のデータよりもはるかに精度が高く,ばらつきの少ない高精度・高信頼性のデータを得ることができた.同様の方法でフィルタリングを行うことで,データの品質を落とすことなく,正確なRTK測量データをリアルタイムに取得することが可能であった.この結果から統計処理を行い外れ値を排除することで,正確で信頼性の高いRTK測量のデータをリアルタイムで得ることができる可能性があることが分かった.これらは自動車の自動運転,ドローンの自動飛行,地盤変動監視システムなどに応用できる可能性をもつと考えられる.