日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT21] 地理情報システムと地図・空間表現

2022年6月3日(金) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (18) (Ch.18)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、コンビーナ:田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学)、座長:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学)

11:00 〜 13:00

[HTT21-P05] 通行しやすさに基づく道路評価

*村元 至穏1田中 一成1 (1.大阪工業大学)


キーワード:道路、通行、指標

1.はじめに
 近年、人口減による交通事故死者数の減少と比較して高齢化にともなう高齢者の交通事故死の割合は増加している。このような状況の中、交通事故による死者数を減少させるには事故を未然に防止し、また被害を軽減するための取り組みが重要である。われわれはこのような高齢社会の中で高齢者、障害者等の安全に資する歩行空間等の整備から生活道路における交通安全を確保していく必要があると考える。

2.研究の目的と方法
 現代の都市空間において、公共交通機関の整備が進行していることや継続的に都市が変化しつづけることによって、私たちが目的地に移動する際、出発地点が同じでも人によっては選択する経路が異なる。人の経路選択を明確にするために歩きやすい道を追求する必要があると考える。歩きやすさについて考えると、人は安全で安心できる道を無意識に選んでいる。つまり利用形態によって通行しやすさが異なるとわれわれは考える。このことから、歩行者や自動車等の移動形態がどのような影響を与え合うか、またどのような道でどの利用形態の組み合わせで通行しやすさを感じるかを数値化し評価することを目的とする。
研究方法は、アンケートにより歩行者の目線で路側帯と歩道の幅員、路側帯の有無が通行しやすさに対してどのような影響を与えるかを調査する。次に、道路を評価する方法として、既往研究による歩きやすさのアンケート調査と比較して有効性を探る。

3.アンケート調査
 道路を駐停車禁止路側帯、路側帯、路側帯なしまたは路側帯の幅が広い、狭い、路側帯なしの3種類、歩道が広い、狭い2種類について通行しやすさの5段階で評価(通行しやすいと思うは5、通行しにくいと思うは1)するアンケートを実施した。
歩道、路側帯の幅が広ければ通行しやすいと思う人が常に増加しないという結果を得たため、幅の広さが常に通行しやすさと比例関係にないと考える。

4.評価方法
 歩行者や自動車等の利用形態の速度(m/s)を占有幅(m)で除したものを評価値として用いる。今回、速度は最高速度とする。自動車と大型バイクは最高速度を道路の制限速度とし、自動車の占有幅は、各道路の制限速度による道路構造令で定められた値を用いる。自動車、大型バイクは道路により占有幅と最高速度が異なるため道路の制限速度ごとに値を求めた。
評価方法は、はじめに、道に対し(各利用形態が通る道路幅/各利用形態での占有幅)と(各利用形態が通る最大指標値/各利用形態の指標値)により最大値を求め、両方を満たす値がその利用形態で通行可能な最大数として利用形態の組み合わせを考える。
 次に道の最大指標値と面積を用い評価する。道の最大指標値は、組み合わせによる指標値の合計と最大指標値で照査する。面積では各利用形態の指標値を用い、値の小さい順にy軸を指標値、x軸を占有幅の合計として点を取り原点から近似曲線を引く。各利用形態の面積を近似積分で求める。この近似曲線にx=評価したい道路の幅として近似積分をし、求まった面積をその道の面積とし、組み合わせによる面積の合計と照査する。この計算によって割合を求め18点満点を総判定として評価する。歩道と車道を区別しする場合は、それぞれ総判定の平均を取った点数とする。割合が100%を超える場合はZとし、1つでもある場合は総判定をZとし通行しにくいとみなす。

5.路側帯と車道、歩道と車道の道路事例の検証
 既存の道路で整備前後において指標値を用いた評価では総判定の点数が上がる改善率が減少しない結果を得た。また、既往研究のアンケート調査から整備前後で歩きやすくなったという声が増えている。このことから指標値による評価の点数が高くなれば歩きやすくなるといえる。

6.おわりに
 本研究ではアンケート調査で歩道や路側帯の幅の広さが通行しやすさに比例しないということがわかった。指標値による評価と既往研究との比較で指標値による整備前後の評価が向上すると通行しやすいという評価は既往研究での歩きやすくなったという結果と同様となった。今後これらの結果をより信憑性や精度を向上させるために今回は最高速度に着目したため移動速度の変化に対応して指標値を求める必要がある。また、道路空間の利用形態を増やす必要がある。