日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-AG 応用地球科学

[M-AG39] ラジオアイソトープ移行:福島原発事故環境動態研究の新展開

2022年5月31日(火) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (33) (Ch.33)

コンビーナ:津旨 大輔(一般財団法人 電力中央研究所)、コンビーナ:恩田 裕一(筑波大学アイソトープ環境動態研究センター)、コンビーナ:高橋 嘉夫(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、コンビーナ:桐島 陽(東北大学)、座長:津旨 大輔(一般財団法人 電力中央研究所)、恩田 裕一(筑波大学アイソトープ環境動態研究センター)

11:00 〜 13:00

[MAG39-P03] Evaluating the transport of surface seawater from 1957 to 2021 using 137Cs deposited in the global ocean as a chemical tracer.

*猪股 弥生1青山 道夫2 (1.金沢大学 環日本海域環境研究センター、2.筑波大学 アイソトープ環境動態研究センター)

キーワード:放射性セシウム、全球表層水、長期変動、インベントリ

1957-2021年に測定された表層水中の137Cs濃度の長期変動から、全球における表層水輸送量を評価した。海水中における137Csの主な起源は、1950-1960年代にアメリカ・ソ連によって行われた大規模核実験、イギリス・フランスの再処理工場、1986年に生じたチェルノブイリ事故、2011年福島原子力発電所からの漏洩である。海水中に含まれる137Csは溶存成分であること、また30.17年の半減期で放射壊変することから、海水循環を評価する化学トレーサーとして有効である。本研究では、Historical Artificial radioactivity in Marine environment, Global2021 database (Aoyama, 2021)に収録されている表層水中の137Cs濃度データをもとに解析を行った。全球表層水を37のBoxに分割し、各Boxの0.5年平均値、見かけの半減期、インベントリを評価した。大規模核実験による137Csの海洋注入量は577 ± 173 PBqと見積もられた。1970年には、表層水における137Csは313 ± 94 PBqに減少しており、このことは大規模核実験により海洋に注入された137Csの54%が10年間で海洋内部に輸送されていたことを示唆している。1980年には、再処理工場からの大西洋縁辺域への直接漏洩により、137Csインベントリは増加した。2010年までには、太平洋からインド洋に輸送された137Cs量は58.8 ± 17.6 PBq、さらに大西洋への137Cs輸送量は49.1±14.7 PBqと見積もられた。西部赤道域におけるTapから、大規模核実験によって西部北太平洋に注入された137Csは40-50年の時間スケールで太平洋からインド洋に輸送されていた。さらに、データ数は少ないものの、インド洋表層水から大西洋表層水に137Csが輸送されていることが示唆された。福島原子力発電所の事故が起きた2011年には, 海洋表層水の137Cs インベントリは60 ± 13 PBqと前年よりも増加しており、このうち15.4 ± 4.5 PBqは福島原子力発電所からの漏洩によるものであった。