日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI31] 法地質学への招待

2022年5月25日(水) 09:00 〜 10:30 301B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:Bradak Balazs(神戸大学)、コンビーナ:川村 紀子(海上保安大学校 基礎教育講座)、杉田 律子(科学警察研究所)、コンビーナ:Gomez Christopher A(神戸大学 海事科学部 海域火山リスク科学研究室)、座長:杉田 律子(科学警察研究所)、川村 紀子(海上保安大学校 基礎教育講座)、Gomez Christopher(神戸大学 海事科学部 海域火山リスク科学研究室)、Balazs Bradak(神戸大学)


09:55 〜 10:10

[MGI31-03] 法地質学への招待

*杉田 律子1川村 紀子2 (1.科学警察研究所、2.海上保安大学校)

キーワード:法地質学、社会貢献、教育、研究

法地質学とは,地質学の技術や知識を法科学,すなわち事件や事故の捜査や裁判に関わる科学に応用する学問分野のことである[1, 2].法地質学は大きく3つの分野に分けることができ,すなわち証拠資料の鑑定,隠匿物の探索,現場鑑識への地質情報の提供である.

ダムや交通網などのインフラ整備や,災害の際などの様々な調査に地質学が貢献していることはすでに広く知られており,また,そこで得られた知見は学会のみならず新聞などでの報道でも発表されている.一方,事件・事故に関わる地質学については,具体的な事例に踏み込んで議論することが難しいこともあり,これまであまり表に出てくることがなかったものと考えられる.また,法科学分野には,国際的な専門誌や学術集会がいくつかあり,これまで法地質学関係の研究成果の多くはこれらで発表されてきた.一方で,2009年には裁判員制度が始まり,また,科学的捜査の推進により,法科学は身近なものになってきている.事件や事故によっては,専門家として研究者に意見や鑑定が依頼されることもあると考えられ,法地質学を実践しているという明確な認識はなくとも,すでに経験のある方もいるであろう.このような状況において,法地質学の研究や教育の推進は,地質学が社会に果たす役割を拡大していくことに他ならない.今後,広く法地質学が普及して行くことが望まれる.

欧米などの諸外国においては司法警察関係機関だけでなく大学や公立または民間の研究機関などが研究開発を進めている例も多い.また,法地質学の国際的組織である法地質学イニシアチブ(IUGS-IFG)の活動により,体系的に法地質学を推進する動きも盛んになっている[1].しかし,国内では特別講義など単位が認められる授業が行われることが例外的にあるが,法科学の講義が実施されている大学はほとんどない.法科学や法地質学という言葉は知っていても,具体的な内容はあまり理解されていないのではないだろうか.

そこで,本発表では,法地質学に関心はあるが,何から取り組むことができるかわからない,という方々にもヒントとなるような研究例などを紹介する.法地質学は,地質学で培われてきた技術や知識を応用するものであり,多くの方々がその専門性を生かすことが可能であると考えられる.

文献
[1] IUGS Initiative on Forensic Geology https://www.qub.ac.uk/sites/iugs/
[2] 杉田律子・川村紀子・組坂健人 (2020) 地質雑, vol.128(8), 407-410.