日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI32] 地球掘削科学

2022年5月26日(木) 15:30 〜 17:00 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:針金 由美子(産業技術総合研究所)、コンビーナ:藤原 治(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、濱田 洋平(独立行政法人海洋研究開発機構 高知コア研究所)、コンビーナ:黒田 潤一郎(東京大学大気海洋研究所 海洋底科学部門)、座長:針金 由美子(産業技術総合研究所)、黒田 潤一郎(東京大学大気海洋研究所 海洋底科学部門)、藤原 治(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、濱田 洋平(独立行政法人海洋研究開発機構 高知コア研究所)

15:45 〜 16:00

[MGI32-02] アラスカ湾(IODP Exp. 341)過去100万年間の酸素同位体比層序と、氷期・間氷期と大陸氷床削剥位相の時系列変化

*朝日 博史1、Mix Alan2須藤 斎、Gulick S.P.S.3、Jaeger John4、LeVay Leah5、Nam SI6 (1.高知大学、2.オレゴン州立大学、3.テキサス大学オースチン校、4.フロリダ大学、5.IODP TAMU、6.韓国極地研究所)

キーワード:アラスカ湾 IODP Exp. 341、酸素同位体比層序、氷期・間氷期サイクル

氷期・間氷期(G-IG)スケールでの気候変化と大陸(山岳)氷床のある造山帯での削剥とその海洋への流出量の時系列変化の相互関係については不明な点が多い。寒冷な高緯度域では、両者関係が強く同調的であると想定するケースが一般的である。国際統合掘削計画第341次アラスカ湾掘削航海(IODP Exp. 341)では、北半球氷床発達(NHG)以降、寒冷化しかつG-IG周期が長期化(すなわち氷期の期間が長くなる)する中期更新世遷移期(MPT: 0.8-1.2Ma)を挟んで、アラスカ山岳氷床の削剥量が寒冷化に同調して増大することを示した。このことは、前述の仮定―寒冷化すると削剥量が増え、両者は同調的―を裏付ける有益な証拠である。しかしながら、両者の氷期・間氷期(G-IG)時間スケールでの検証が必要不可欠である。本研究では、IODP Exp. 341航海で掘削された2サイト(U1417: 56.06N, 147W , and U1418: 58N, 144.5W)のG-IG時間スケールで年代モデルを、酸素同位体比層序をもとに構築し紹介する。年代モデルを元に、削剥離量の関数である、総埋没量(MAR: Mass Accumulation Rate)を復元し、MARのG-IGとの同調整について議論する。U1417, U1418には、浮遊性有孔虫 (N. pachyderma)が少ないながらも算出し、年代モデル構築には十分な時間解像度での酸素同位体比カーブを過去100万年(1.0 Ma)間相当の長さで構築できた。陸に近いU1418(82 cm / kyr)では、外洋に位置するU1417(11 cm / kyr)に比べて、平均で約7倍の堆積速度を示し、多くの削剥供給が海洋にもたらされていること、陸からの距離が供給量に大きく反映されることが明らかとなった。各サイトでの埋没量(MAR)は、G-IG周期と同調的な傾向を示したが、外洋に位置するU1417では、氷期(寒い時期)に必ず高くなり、過去100万年の間、従来の仮説―寒冷化すると削剥量が増え、両者は同調的―を支持する結果となった(両者は位相関係、もっと寒い時期に最大のMAR)。反面、U1418では、100―60万年前までは同様の両者は位相関係を示したものの、60万年前を境にMARはG-IG周期に対して半位相(寒冷から温暖への変遷期にMARの最大値)であった。このことは、山岳氷床の削剥が最大になる寒冷化の閾値を示唆している。100万年前は、全球的な気候変動の報告や高緯度域での海氷発達に関連した海洋環境の大きな変遷が報告されており、本研究成果により、地球機構システム理解に大きな貢献を果たすことが期待されている。