日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI32] 地球掘削科学

2022年5月27日(金) 09:00 〜 10:30 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:針金 由美子(産業技術総合研究所)、コンビーナ:藤原 治(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、濱田 洋平(独立行政法人海洋研究開発機構 高知コア研究所)、コンビーナ:黒田 潤一郎(東京大学大気海洋研究所 海洋底科学部門)、座長:針金 由美子(産業技術総合研究所)、黒田 潤一郎(東京大学大気海洋研究所 海洋底科学部門)、藤原 治(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、濱田 洋平(独立行政法人海洋研究開発機構 高知コア研究所)

10:00 〜 10:15

[MGI32-09] 大阪平野下基盤における原位置地殻応力(4)-コア変形法適用による応力値測定-

*小村 健太朗1、船戸 明雄2、伊藤 高敏3 (1.防災科学技術研究所、2.深田地質研究所、3.東北大学流体科学研究所)

キーワード:コア変形法、原位置地殻応力、岩石コア、大阪平野

日本列島の原位置の絶対応力に関するデータ,特に深さ100mを越える深部データは,陸域においても,数少ない状況にあるなか,掘削で採取された既存の岩石コアを用いた地殻応力測定法を適用し,信頼性の高い地殻応力データをはばひろく取得することを目指してきた.本発表では,防災科学技術研究所の,大阪平野にある深層地殻活動観測井における原位置地殻応力測定の結果を報告する.本観測井では,ボアホールテレビュア検層から,ボアホールブレイクアウトが観察され,すでに応力方位が推定されているが(小村,地震学会秋季大会2020),Funato and Ito (2017, IJRMMS)で設計され,防災科研に整備された装置でコア形状を再計測し,コア変形法(DCDA法, Diametrical Core Deformation Analysis法)を適用して応力値を推定した.コア変形法では,地下深部から採取された岩石コアが,応力解放により弾性変形することから,その弾性変形を計測し,岩石の弾性定数と掛け合わせて応力値を推定する.先行研究により,1000mを超えるような深部岩石コアでは,採取後の弾性変形が大きく,コア変形法の適用できることが示されている.
大阪府の此花観測井(北緯34°39'45.92",東経135°23'22.53",掘削深度約2033m)の基盤に達する深度2035.5mコアと田尻観測井(北緯34°23'52.14",東経135°17'01.24",掘削深度約1532m)の同じく基盤となる深度1202.4mおよび1494.8mコアを用いた.採取後,10年以上経過したものではあるが,外周にそって直径がサインカーブ状に変化し,岩石コア断面が応力開放にともない楕円状に弾性変形していることが示され,コア変形法の適用可能と判断した.一方,計測された岩石コアそのものではないが,近接する岩石コアの岩石強度試験結果から,ヤング率とポアソン比を求めた.弾性変形量と弾性定数をコア変型法の理論式にあてはめて,応力値を求めたところ,~60 MPaから100MPaを越える差応力値となった.この値は,過去周辺の,応力解放法,水圧破砕法等の孔井内原位置地殻応力測定の結果と比べて,大きな値となっている.大きな差応力に意味があるかどうか,さらに周辺の観測井コアのコア変形法による応力値とも比較しながら,考えていく必要がある.応力方位はボアホールブレイクアウトから求まり,周辺の広域応力方位に整合的で,水平最大圧縮応力方位は,ほぼE-W方向となった.
本結果から,孔井掘削において岩石コア採取と孔壁画像検層が実施され,条件が適合して,ボアホールブレイクアウトが観察されれば,原位置地殻応力の値と方位をともに計測できるという方針が示されたものと考える.