日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI33] 計算科学が拓く宇宙の構造形成・進化から惑星表層環境変動まで

2022年5月23日(月) 09:00 〜 10:30 展示場特設会場 (1) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:林 祥介(神戸大学・大学院理学研究科 惑星学専攻/惑星科学研究センター(CPS))、コンビーナ:牧野 淳一郎(国立大学法人神戸大学)、草野 完也(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、コンビーナ:小久保 英一郎(自然科学研究機構国立天文台科学研究部)、座長:小久保 英一郎(自然科学研究機構国立天文台科学研究部)

09:15 〜 09:30

[MGI33-02] 富岳向け銀河形成シミュレーションコード ASURA-FDPS の現状

*斎藤 貴之1、岩澤 全規2、平居 悠4細野 七月1、野村 昴太郎1、坪内 美幸3牧野 淳一郎1、岡本 崇5、藤井 通子6、平島 敬也6 (1.神戸大学、2.松江高専、3.東北大学、4.理化学研究所、5.北海道大学、6.東京大学)

キーワード:銀河形成、数値シミュレーション

我々は現在、富岳向けに銀河形成シミュレーションコード ASURA-FDPS を開発している。本講演では、2020年の JpGU での発表に引き続き、ASURA-FDPS の現在の状況について報告する。

これまでのところ、計算機能力や数値計算方法の限界により、銀河形成シミュレーションでは、個別の恒星を直接扱うことができず、Simple stellar population (SSP)と呼ばれる、同じ時間同じ金属量で生まれた恒星の集団をシミュレーション中の星成分として扱い、力学進化、エネルギーフィードバック、そして金属量進化などを扱っている。一方、現在進行している欧州の Gaia 衛星や今後日本のすばる望遠鏡に搭載される PFS では、天の川銀河や近傍銀河の恒星の個別の運動を求めることができ、銀河形成過程について本質的な情報をもたらす。このような観測的進展に対応する個別の恒星の運動を直接扱うような銀河形成シミュレーションの達成は急務である。我々の ASURA-FDPS では、富岳の高い性能と、超並列シミュレーション用に開発された ASURA-FDPS により、個別の恒星スケールを分解する銀河形成シミュレーション達成に向けて開発を継続している。

2020年は基本的な重力流体力学ソルバーのチューニングを行なって、2021年3月の富岳全系利用では暗黒物質の自己重力およびガスの自己重力流体の計算で 31Pflops を達成した。一方でこの全系利用により、富岳のシステムではノードあたりのメモリが32GBと少ないため、1ノードあたりのMPIプロセス数を4から1にする必要があり性能が半減したり、MPI comm split を用いたシステム全体と短い時間に進化する小さな領域の計算を並列におこなうのが困難であることが明らかとなった。そこで現在は、sheared step 的に計算をするモデルで物理モデルの実装と試験を行なっている。

講演では、これまでに得られた性能や、富岳上で遭遇した問題、そしてシミュレーションの現状について報告する。