日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI34] データ駆動地球惑星科学

2022年5月30日(月) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (37) (Ch.37)

コンビーナ:桑谷 立(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、コンビーナ:長尾 大道(東京大学地震研究所)、上木 賢太(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、コンビーナ:伊藤 伸一(東京大学)、座長:桑谷 立(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、上木 賢太(国立研究開発法人海洋研究開発機構)

11:00 〜 13:00

[MGI34-P07] 非負値分解による火山岩主要元素端成分の抽出

*上木 賢太1吉田 健太1桑谷 立1、赤穂 昭太郎2 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構、2.産業技術総合研究所)

キーワード:火山岩、主要元素組成、端成分マグマ、機械学習

マグマ主要元素組成は、端成分マグマ同士の混合や、特定の鉱物種の分化によって進化する。マグマ端成分を決定することは、地殻内部のマグマ進化プロセスを議論する上でも、異なるマグマの関与による噴火の推移を議論する上でも重要である。ハーカー図に基づいた化学組成トレンドの解析や鉱物量・組成の情報から端成分マグマを決定する手法は広く用いられている。一方、岩石の化学組成には総和制約が存在するため、分析値として与えられる酸化物の重量%をそのまま用いた場合、例えば加算と減算が区別できない場合や、擬似的な端成分が生じてしまう可能性がある。

このような問題に対処するため、本研究では非負値行列因子分解 (Non-negative Matrix Factorization; NMF) と呼ばれる解析手法を火山岩化学組成に適用した。NMFとは、ある行列を、非負の値から構成される2つの行列に分解する数理手法である。複数 (m) の元素と複数サンプルからなる全岩化学組成データについて、個々の試料の組成を少数 (n<m) 個の端成分の混合比で表現するという操作に相当する。元データを非負の値に分解できること、さらに、元データを小数の特徴量で表すことが可能となることが本手法の特徴である。Yoshida et al. (2018, JMG)では、NMFを用いることで、四国三波川の一連の変成岩の化学組成バリエーションが4つの端成分の混合に分解可能であることを示した。

本研究では、NMFを、東北日本の火山群である仙岩火山地域内の火山で採取された溶岩全岩化学組成データセットに適用した。その結果、火山岩においても、NMFを用いることで一連の主要元素組成データを、少数の端成分組成からなる行列で表すことが出来ることが分かった。データセット内の個々の溶岩の主要元素化学組成は、この少数の端成分の足し合わせで表現することが出来る。NMFによって得られた端成分の化学組成を検討した結果、それぞれの端成分がマグマ混合および結晶分化プロセスに対応すること、すなわち、この分解によって、マグマ混合と結晶分化による主要元素組成変化を分解することが可能であることが分かった。本発表では、NMFで決定された端成分やサンプルごとの端成分混合比をもとに、島弧地殻内部でのマグマ進化を議論する。