日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS02] Evolution and variability of the Asian Monsoon and Indo-Pacific climate during the Cenozoic Era

2022年5月31日(火) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (29) (Ch.29)

コンビーナ:佐川 拓也(金沢大学理工研究域)、コンビーナ:松崎 賢史(東京大学 大気海洋研究所)、座長:佐川 拓也(金沢大学理工研究域)、松崎 賢史(東京大学 大気海洋研究所)

11:00 〜 13:00

[MIS02-P05] モルジブ海底堆積物のPbとSr同位体比を用いた南アジアモンスーン発達史の復元

*西村 優吾1田寺 優香1山下 勝行1井上 麻夕里1 (1.岡山大学大学院自然科学研究科)

キーワード:モルジブ堆積物、南アジアモンスーン、Pb同位体、Sr同位体

現在、南アジアモンスーン(SAM)は主にインド周辺の人々の生活に影響を及ぼしている。これまで、モルジブ海底堆積物でのドリフト堆積物の存在やモルジブおよびマルタ島の堆積物中のNd同位体比変動に基づき、約20 Maに弱い状態のSAMが発生し、その後、13 Maに強化したことが示唆されている。本研究では、IODP Exp. 359によって掘削されたモルジブ海底コア試料2本(U1467, U1468)についてPbとSrの同位体比分析を行うことで、より詳細なSAMの発達史の復元を試みた。U1468サイトは25 Maから現在までの堆積物をカバーしており、U1467サイトは13 Ma以降のドリフト堆積物が大部分を占めており、どちらも主成分は炭酸塩であるが、本研究では堆積物試料を炭酸塩成分と非炭酸塩成分とに分けて分析を行った。分析の結果、特に炭酸塩成分のPb同位体比変動においては約22 Maと13 Maで、206Pb/204Pb比と207Pb/204Pb比の両方にかなり高いピークが見られたが、208Pb/204Pbではそのような傾向は見られなかった。今回分析したモルジブ海底堆積物の高い206Pb/204Pb比(22-24)は、第四紀以降のモルジブ諸島周辺で報告されている鉛同位体比よりかなり高い値を示した。一方で、始生代カナダ楯状地の石灰岩で報告されている高い206Pb/204Pb比と類似していることから、モルジブ周辺では南インドの始生代ダルワールクラトンがPbの起源の候補として考えられる。Sr同位体比変動については、炭酸塩成分と比べて非炭酸塩成分で22~19 Maまでと8 Ma以降に87Sr/86Sr比が高い値を示した。一方で、13-10 Maでは炭酸塩と非炭酸塩成分がほとんど同じ値を示した。これらの結果を踏まえると、22-19 Maと13-10 Maは、SAMの進化に伴い、水循環やモンスーン風が強まったと考えられる。