日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS07] Developments and applications of XRF-core scanning techniques in natural archives

2022年5月27日(金) 15:30 〜 17:00 304 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:Huang Jyh-Jaan Steven(Institute of Oceanography, National Taiwan University)、コンビーナ:天野 敦子(産業技術総合研究所)、村山 雅史(高知大学農林海洋科学部海洋資源科学科)、コンビーナ:Lowemark Ludvig A(National Taiwan University)、Chairperson:Jyh-Jaan Steven Huang(Institute of Oceanography, National Taiwan University)、天野 敦子(産業技術総合研究所)、村山 雅史(高知大学農林海洋科学部海洋資源科学科)、Ludvig A Lowemark(National Taiwan University)

16:25 〜 16:40

[MIS07-04] XRFコアスキャナーを用いたコア堆積物の乾燥かさ密度の推定

*三武 司1多田 隆治2関 有沙3入野 智久4 (1.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻、2.千葉工業大学地球学研究センター、3.信州大学 理学部、4.北海道大学 大学院地球環境科学研究院)

キーワード:XRFコアスキャナー、ITRAX、乾燥かさ密度、日本海

XRFコアスキャナーは、コア堆積物試料の定性〜定量元素分析を非破壊で高解像度かつ迅速に行える装置である。分析で得られるXRFスペクトルからは、入射X線と分析試料との相互作用によるレイリー散乱、コンプトン散乱のピークも読み取ることができ、コンプトン散乱の強度や、コンプトン散乱とレイリー散乱の比が分析試料のかさ密度と負の相関を持つ事例が報告されている(Croudace et al., 2006; Fortin et al., 2013)。乾燥かさ密度(dry bulk density: DBD)は、例えば元素の埋没フラックスが求める上で必須の物理量であり、元素の埋没フラックスを知ることは、生物地球化学的物質循環を把握する上で不可欠である。そこで本発表では、XRFコアスキャナーの分析結果から、堆積物コア試料のDBDを精度よく定量的に推定する方法について検討した。
分析には、IODP Exp. 346で採取された第四紀日本海半遠洋性堆積物のうち、深度の異なる3地点(U1424、U1425、U1426)の試料を用いた。第四紀日本海半遠洋性堆積物は、細粒砕屑物を主体とし、生物源シリカや生物源石灰質物質を様々な程度に含み、半遠洋性〜遠洋性堆積物組成のかなりの範囲をカバーすることが期待される。高知コアセンター(KCC)で冷蔵保管された半割コアの表面を削り、新鮮な面に薄いプラスチックフィルムをかけた状態で、KCCのXRFコアスキャナー(ITRAX、Mo管球)で分析した。そして、その結果を船上のMoisture and Density(MAD)測定で求められたDBD(Tada et al., 2015)と比較した。
海洋堆積物の粒子組成は、堆積物のDBDや元素組成に大きな影響を与える。例えば、含水率(孔隙中の海水)の増加はDBDを下げると共にCl含有量を増加させ、生物源シリカはその高い殻内孔隙率によってDBDを下げると共にSi含有量の増加を引き起こす。Feは主要な重元素であるため、含有量が増加すると粒子密度は増加する。有機物は軽元素からなるので、その含有量増加は粒子密度を下げる。また、海成有機物はBr含有量を増加させる。そこで、MADによるDBDを目的変数、ITRAXによる散乱X線強度およびSi、Cl、Fe、Brなどの蛍光X線強度を説明変数として、様々な説明変数の組み合わせによる重回帰分析を行った。その結果、散乱X線の強度に加えてCl強度を導入することにより、乾燥かさ密度の推定の精度を高めることができる可能性が示唆された。
XRFコアスキャナーの分析結果のみを使って堆積物のDBDを精度よく推定できれば、元素分析結果とmmオーダーで一対一に対応した密度データが得られ、より正確かつ高解像度で物質フラックスを推定することができる。それにより、古物質循環復元をより高時間解像度で定量的に行えると期待される。