日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS09] Effects of lightning, severe weather and tropical storms

2022年5月24日(火) 15:30 〜 17:00 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:佐藤 光輝(北海道大学 大学院理学研究院)、コンビーナ:久保田 尚之(北海道大学)、Lopez Glenn Vincent C.(0)、コンビーナ:Purwadi Purwadi(Weather Modification Service Laboratory, The National research and Innovation Agency of Indonesia )、座長:久保田 尚之(北海道大学)、佐藤 光輝(北海道大学 大学院理学研究院)

16:15 〜 16:30

[MIS09-04] 音波を用いた落雷位置の推定手法の開発

★招待講演

*皆川 明1,2斉藤 優希1,2、藤田 滋3,2、平田 憲4,2成瀬 延康5,2高橋 幸弘6,2 (1.市川高等学校、2.スーパーサイエンティストプログラムプラス、3.日本大学生物資源科学部獣医学科、4.北海道大学理学部、5.滋賀医科大学医学部医学科、6.北海道大学大学院理学院)


キーワード:落雷、落雷地点推定、音波観測、低コスト落雷観測装置

現在の日本で公開される落雷位置データは1km以上長さのメッシュで提供されることが多く、落雷位置を提供する会社でも300m程度の落雷位置の推定誤差がある。どの建物に落雷被害が出たかを特定できる数十m以下の位置精度がないため、仮に家財が被害を受けた場合、経年劣化や消耗、一般的な故障と見分けがつかないことから、保険が下りず問題になることがある。
落雷位置の精度が上記にとどまる理由は、落雷時に発生する電磁波の到達速度差から落雷位置が導出されており、発生する電磁波が、点ではなく三次元的広がりを有していることに因っている。一方、落雷位置を十数mの精度で推定したとの報告があり、その先行研究では落雷位置の推定に音波を用いている。その原理は、落雷時の低周波音を3地点で観測し、その観測時刻差から落雷位置を推定するものである。ただし、十数mの位置精度が達成された理由は、山岳部の12km程度の狭い範囲で高度による気温の逓減率を想定した場合であった。気温が局所的に2度以上異なる都市部で、この落雷位置の推定手法の精度が十数mを達成できるかどうかは自明ではない。
本研究では局所的に気温差の大きい都市部において10−20m落雷位置の推定精度が達成可能な、音波を用いた落雷位置の推定手法の開発を最終目的としている。そのために、音波、発生時刻0としての稲光の電磁波、および気温、が多点観測できる複数の装置の開発を行うと同時に、計測装置の低コスト化(装置一台あたり2万円以内)をねらった。これにより、GPSモジュールを搭載せずに落雷地点までの距離を計算することができる。しかし、自然の落雷は発生地点や時刻を正確に知ることができない上、雷鳴の発生点が多発的で、かつ、ランダムに三次元的に広がるため、開発装置の精度をテストするには適さない。そこで、本研究では、あらかじめ、発生(打ち上げ)時刻、発生源が点状で、エネルギーがわかっている打ち上げ花火を観測対象として、落雷位置の推定手法と開発装置の原理実証を本研究の目的とした。
開発装置には、Raspberry Pi 3 Model B、高感度マイクアンプキット(秋月電子、50Hz~16kHz)、A/Dコンバーター、(10bit、mcp3008(Microchip))、温湿度センサー(16bit、±0.3℃誤差、SHT31-DIS(SENSIRION))を用いた。
開発装置3台を用いて、1.打ち上げ花火の音波を観測、2. 音波と同時撮影された花火の映像から、動画内で花火が破裂した時刻を落雷における電磁波到達時刻と考え時刻0とし、3,気温も同時計測した。観測地点はなるべく打ち上げ地点からの距離に差ができるようにするため、花火の打ち上げ地点から約490m、約2700m、約4200m離れている三カ所に観測装置を設置した。精度検証のため、花火が単発で打ちあがっているもののみを観測対象とし、観測装置に音が届いた時刻差を用いて花火の破裂地点を推定した。サンプリング周波数135kHzとして、音波が装置に到達した時刻差から花火の破裂地点までの距離の推定誤差は、それぞれの地点で1m、9m、50mであった。気温を各地点で実測することで10m程度の誤差で落雷位置の特定が可能な装置であること確認できた。