14:45 〜 15:00
[MIS14-05] 水田土壌中の酸化還元サイクルへの粘土鉱物中の鉄の寄与; 窒素固定を行う鉄還元菌の活性化
キーワード:水田土壌、酸化還元反応、スメクタイト、鉄還元菌、窒素固定、XAFS
鉄(Fe)は地球上で最も多く存在する元素であり、様々な化学成分や生物相との相互作用しながら地球表層を循環している。特にFe(II)とFe(III)の酸化還元反応は、地球大気の進化や微生物の代謝と深く関わっており、地球化学的な観点からも非常に重要である。本研究ではFeの酸化状態と化学種に着目した。
Feの酸化還元状態は、表層土壌環境における様々な元素(ヒ素やカリウムなど;Takahashi et al., 2004; Khaled and Stucki, 1991)の挙動に大きな影響を与える。しかし、これまでは、粘土鉱物(Stucki, 2011)や土壌中のferrihydriteの酸化還元状態のみが個別に注目されてきた。本研究では、土壌中のFeを含む粘土鉱物が土壌の酸化還元反応にどの程度寄与しているかを分析した。
微生物とFeの相互作用のうち、本研究では、水田土壌での微生物によるFeの還元と窒素固定に注目した。本研究では、鉄還元菌が利用可能なFe(III)として、これまで調べられてきたhematiteやferrihydrite(Masuda et al., 2021)に加えて、粘土鉱物(smectite)の8面体構造中のFe(III)が鉄還元菌により利用可能であるかを調べた。また、粘土鉱物中のFe(III)によってその窒素固定能が高まるかを調べた。
本研究ではµ-XRF(X-ray Fluorescence)-XAFS法やSTXM(Scanning Transmission X-ray Microscopy)、メスバウアー分光法を用いた測定を行った。さらに、水田土壌や粘土鉱物を用いた培養(還元)・再酸化実験を行った。これらの実験では主に1,10-フェナントロリン法とXANES分析を用いて、液相中及び固相中のFe濃度および化学種分析を行った。また、純粋培養系で培養実験を行い、アセチレン還元法を用いてその時の窒素固定活性を測定した。
XAFSスペクトルの線形結合フィッティングの端成分としてFe(II)-smectite とFe(III)-smectiteを用いて粘土鉱物中のFe(II)/Fe(III)比を決定する新しい方法を開発した。本手法を用いることにより、µ-XRF-XAFS分析において、単純なFe(II)/Fe(III)比だけでなくFe(II)とFe(III)の化学種の比率を調べることが可能になった。土壌の培養・再酸化実験から、水田土壌中のFe(III)-smectiteの約30%が還元されることがわかった。これは全鉄の約15%に当たり、酸化力のあるFe化学種としてFe(III)-smectiteが土壌中で重要であることを示している。また、還元された粘土鉱物中のFe(II)は、大気によって再酸化されることも示された。さらに、土壌中の溶存Fe(II)の大部分は、おそらくsmectiteに吸着した形で存在することがわかった。純粋培養実験からは、Geomonas terraeがFe(III)-smectiteを電子受容体として利用すること、また、Fe(III)-smectiteにより窒素固定活性が高まることが明らかになった。
本研究で調べたFe(III)-smectiteは、ferrihydriteやhematiteとは異なり、還元してもFe(II)が溶解しにくいという利点がある。従って、粘土鉱物が水田土壌中に残り続けると、水田の落水期に粘土鉱物中のFe(II)が酸化されてFe(III)となり、湛水期には微生物によってFe(II)に還元されるサイクルが形成できるため、Fe(III)-smectiteは長期間に渡る窒素固定鉄還元菌の活性化に利用可能と期待される。Fe(III)-smectiteの施用により、実際の水田土壌においても窒素固定能が高められれば、CO2濃度上昇の原因の1つである人工窒素肥料の削減に貢献できると期待される。
Feの酸化還元状態は、表層土壌環境における様々な元素(ヒ素やカリウムなど;Takahashi et al., 2004; Khaled and Stucki, 1991)の挙動に大きな影響を与える。しかし、これまでは、粘土鉱物(Stucki, 2011)や土壌中のferrihydriteの酸化還元状態のみが個別に注目されてきた。本研究では、土壌中のFeを含む粘土鉱物が土壌の酸化還元反応にどの程度寄与しているかを分析した。
微生物とFeの相互作用のうち、本研究では、水田土壌での微生物によるFeの還元と窒素固定に注目した。本研究では、鉄還元菌が利用可能なFe(III)として、これまで調べられてきたhematiteやferrihydrite(Masuda et al., 2021)に加えて、粘土鉱物(smectite)の8面体構造中のFe(III)が鉄還元菌により利用可能であるかを調べた。また、粘土鉱物中のFe(III)によってその窒素固定能が高まるかを調べた。
本研究ではµ-XRF(X-ray Fluorescence)-XAFS法やSTXM(Scanning Transmission X-ray Microscopy)、メスバウアー分光法を用いた測定を行った。さらに、水田土壌や粘土鉱物を用いた培養(還元)・再酸化実験を行った。これらの実験では主に1,10-フェナントロリン法とXANES分析を用いて、液相中及び固相中のFe濃度および化学種分析を行った。また、純粋培養系で培養実験を行い、アセチレン還元法を用いてその時の窒素固定活性を測定した。
XAFSスペクトルの線形結合フィッティングの端成分としてFe(II)-smectite とFe(III)-smectiteを用いて粘土鉱物中のFe(II)/Fe(III)比を決定する新しい方法を開発した。本手法を用いることにより、µ-XRF-XAFS分析において、単純なFe(II)/Fe(III)比だけでなくFe(II)とFe(III)の化学種の比率を調べることが可能になった。土壌の培養・再酸化実験から、水田土壌中のFe(III)-smectiteの約30%が還元されることがわかった。これは全鉄の約15%に当たり、酸化力のあるFe化学種としてFe(III)-smectiteが土壌中で重要であることを示している。また、還元された粘土鉱物中のFe(II)は、大気によって再酸化されることも示された。さらに、土壌中の溶存Fe(II)の大部分は、おそらくsmectiteに吸着した形で存在することがわかった。純粋培養実験からは、Geomonas terraeがFe(III)-smectiteを電子受容体として利用すること、また、Fe(III)-smectiteにより窒素固定活性が高まることが明らかになった。
本研究で調べたFe(III)-smectiteは、ferrihydriteやhematiteとは異なり、還元してもFe(II)が溶解しにくいという利点がある。従って、粘土鉱物が水田土壌中に残り続けると、水田の落水期に粘土鉱物中のFe(II)が酸化されてFe(III)となり、湛水期には微生物によってFe(II)に還元されるサイクルが形成できるため、Fe(III)-smectiteは長期間に渡る窒素固定鉄還元菌の活性化に利用可能と期待される。Fe(III)-smectiteの施用により、実際の水田土壌においても窒素固定能が高められれば、CO2濃度上昇の原因の1つである人工窒素肥料の削減に貢献できると期待される。