日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS15] 山の科学

2022年5月22日(日) 09:00 〜 10:30 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、コンビーナ:佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、奈良間 千之(新潟大学理学部フィールド科学人材育成プログラム)、コンビーナ:今野 明咲香(常葉大学)、座長:佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、奈良間 千之(新潟大学理学部フィールド科学人材育成プログラム)

10:00 〜 10:15

[MIS15-05] 2021年9月の北アルプス槍穂高西方の地震と落石

*小森 次郎1、小池 徹2 (1.帝京平成大学、2.(株)地球システム科学)

キーワード:群発地震、崖錐、登山道、山小屋、観光防災、日本アルプス

2021年9月19日17時18分頃,槍ヶ岳の北西側約2km,地下10km付近を震源とするM 5.3の地震が発生した.これによって,気象庁の飛騨市神岡町,京大防災研の高山市上宝町,テレビ松本の槍ヶ岳山荘のそれぞれの地震計が震度3,4,5弱を記録した.地震発生当時,筆者らは偶然にも南岳(震央から南南東4 km)近くのテント場におり,一瞬の地鳴りの直後,テント脇の風防用の石済みが崩れるの程のゆれに遭遇した.その翌朝には南側の大切戸,北穂高小屋を経て涸沢へ下ったが,登山道沿いでは新鮮な落石の堆積を認め,我々自身も小さな落石事故に巻き込まれた.この地震によるとみられる落石で一人の方が亡くなっている.ご冥福をお祈りします.
 2021年9月19日は紅葉が進んだ晴天の日曜日であったが,地震の発生は殆どの登山者が行動を終えた夕方であり,一人が亡くなった以外は大きな事故は発生しなかった.しかし,今回のような地震は2020年4月頃の地震活動(最大M 5.5)や1998年8月頃の地震活動(M 5.6)ように,過去にも繰り返し発生している.また,この地域は急峻で不安定な岩場が多く,なおかつ人気の登山ルートが集中していることから,日頃から落石の事故が相次いでいる.したがって,この地域独自の地震と落石に対する備えが必要である.本論では,今回の地震の被害,および登山者や山小屋がどの様に対応したのかについて報告する.