日本地球惑星科学連合2022年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS15] 山の科学

2022年5月30日(月) 11:00 〜 13:00 オンラインポスターZoom会場 (34) (Ch.34)

コンビーナ:苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、コンビーナ:佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、奈良間 千之(新潟大学理学部フィールド科学人材育成プログラム)、コンビーナ:今野 明咲香(常葉大学)、座長:奈良間 千之(新潟大学理学部フィールド科学人材育成プログラム)、今野 明咲香(常葉大学)、佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)

11:00 〜 13:00

[MIS15-P01] 大井川中流における塩郷堰堤建設に伴う植生変化と河道特性への影響

*今野 明咲香1、石川 稜 (1.常葉大学)

キーワード:大井川、ダム建設、植生変化、河道特性

大井川は,上流に赤石山脈の間ノ岳を持つ急流河川であり,河川内には網状流路が発達している。1900年代に流域全域にわたり多数のダムや堰堤が建設されたことにより,水量は著しく減少した。特に,1960年に完成した塩郷堰堤直下の鵜山の七曲り地域では,激しい取水により下流約22㎞にわたってほとんど水が流れない「河原砂漠」と化した(蔵治・溝口,2007)。その後「水返せ」運動という住民運動によりわずかに放流されるようにはなったものの,本来川に流れるはずの水の90%を送水管へ流出させることが認められており,依然として水量は少ない状況である。さらに塩郷堰堤下流域では洗堀により河床低下が発生しており,水量減少により河川環境が大きく変化している(国土交通省河川整備基本方針)。そこで本研究は,塩郷堰堤直下の鵜山の七曲りを対象に渇水による河川環境の変化とその影響を明らかにすることを目的に、河川環境の経年変化と河川横断方向の地形調査を行った。
塩郷堰堤建設前から現在までの複数の空中写真の判読を行い,鵜山七曲り地域の河川内環境(河道,植被,礫原)を判読し分類図を作成した。分類図を元にレベル測量を行い,作成された地形断面図から河川環境と地形との対応について検討した。その結果,塩郷堰堤建設後から現在までの間に河川内の植被が10倍以上に拡大した。さらに木本植生が発達し,その場所は水面から2m以上の場所にあった。このことから,塩郷堰堤建設により水量が減少した結果,河道が固定されたことで植生が広く拡大したと考えられる。また河道が特定の場所に固定されたことで,河床低下に影響を与えた可能性がある。