11:00 〜 13:00
[MIS16-P06] 砂質土石流から混濁流へのFlow transformationの数値的検討
キーワード:堆積物重力流、混濁流、土石流、流れの遷移、数値モデル
海底地すべりに起因して発生する土石流では、その流動過程において土石流から混濁流へのFlow transformationが生じるとされる。このとき、土石流の粒度構成が砂質の場合は、流下中に初期状態から流れの特徴が大きく変化する。すなわち、土石流に含まれる砂成分は選択的に沈降して堆積層を形成するのに対し、粘土成分は上層に分離して混濁流を生成することになる。このようにして起こる砂質土石流のFlow transformationは混濁流の成因のひとつとして重要であるが、このプロセスを表現できる数値モデルはこれまで提案されていなかった。既往研究では水槽実験に基づいて混濁流の生成メカニズムが種々提示されているものの、定量的な議論が少なく、定式化が十分ではない。
そこで本研究では、砂質土石流のFlow transformationを二層浅水モデル(下層:土石流、上層:混濁流)で表現し、既往の実験結果と比較することで混濁流の生成プロセスについて数値的に検討した。このモデルでは、土石流層は液状化した砂と均質な水および粘土よりなる間隙流体で構成されるものと近似される。この土石流層の砂は沈降速度に応じて徐々に堆積する。初期の土石流から混濁流が生成する過程については、「流れ表面での連行」と「間隙流体の湧き出し」の2種類のメカニズムを考慮し、それぞれのメカニズムごとのサスペンション生成速度に応じて土石流層から混濁流層への質量交換が生じるとした。「流れ表面での連行」は土石流層表面における摩擦によって起こる堆積物の連行によって混濁流が生成されるとする考え方で、既往文献において両層の速度差に比例する形で定式化されている。一方、「間隙流体の湧き出し」は,液状化した土石流層の間隙流体が上層へ湧き出して混濁流が生成されると作用である。本研究では、砂が流動過程から堆積へと変化する際の濃度変化(圧縮)によって間隙流体が押し出されると仮定し、砂の堆積速度と間隙流体の流出速度をカップリングさせることで新たに定式化した。
数値実験では、既往の実験における条件にならって一様勾配の一次元斜面に上流端から土石流を供給した。混濁流の生成メカニズムの影響を検討するため、流れ表面での連行のみを組み込んだモデルによる計算と、流れ表面での連行と間隙流体の湧き出しの両者を考慮したモデルによる計算の2ケースを比較した。既往の実験での測定結果と比較すると、間隙流体の湧き出しを考慮したモデルの計算結果の方が流れの先頭部付近での再現性が向上した。これは、流れ表面での連行による混濁流生成メカニズムは流れの下層(土石流)と上層(混濁流)の速度差が大きい混濁流の発達初期には効くものの、混濁流が発達して両層の速度差が小さくなるとサスペンションの生成速度が小さくなるためである。一方、間隙流体の湧き出しによるサスペンションの生成は先頭部以外でも砂の堆積が生じる限り発生するため、後方部で生じたサスペンションが圧力勾配によって先頭部へ送り込まれているためと考えられる。以上のように、混濁流の発達段階に応じて混濁流生成メカニズムの寄与は変化する。そして、より連続的に混濁流の発達過程を考えるためには、従来考慮されていた「土石流表面での堆積物連行作用」に加えて、流れが十分に発達した後に重要となる「間隙流体の湧き出し」作用を考慮する必要があることが本研究の数値実験により示された。
そこで本研究では、砂質土石流のFlow transformationを二層浅水モデル(下層:土石流、上層:混濁流)で表現し、既往の実験結果と比較することで混濁流の生成プロセスについて数値的に検討した。このモデルでは、土石流層は液状化した砂と均質な水および粘土よりなる間隙流体で構成されるものと近似される。この土石流層の砂は沈降速度に応じて徐々に堆積する。初期の土石流から混濁流が生成する過程については、「流れ表面での連行」と「間隙流体の湧き出し」の2種類のメカニズムを考慮し、それぞれのメカニズムごとのサスペンション生成速度に応じて土石流層から混濁流層への質量交換が生じるとした。「流れ表面での連行」は土石流層表面における摩擦によって起こる堆積物の連行によって混濁流が生成されるとする考え方で、既往文献において両層の速度差に比例する形で定式化されている。一方、「間隙流体の湧き出し」は,液状化した土石流層の間隙流体が上層へ湧き出して混濁流が生成されると作用である。本研究では、砂が流動過程から堆積へと変化する際の濃度変化(圧縮)によって間隙流体が押し出されると仮定し、砂の堆積速度と間隙流体の流出速度をカップリングさせることで新たに定式化した。
数値実験では、既往の実験における条件にならって一様勾配の一次元斜面に上流端から土石流を供給した。混濁流の生成メカニズムの影響を検討するため、流れ表面での連行のみを組み込んだモデルによる計算と、流れ表面での連行と間隙流体の湧き出しの両者を考慮したモデルによる計算の2ケースを比較した。既往の実験での測定結果と比較すると、間隙流体の湧き出しを考慮したモデルの計算結果の方が流れの先頭部付近での再現性が向上した。これは、流れ表面での連行による混濁流生成メカニズムは流れの下層(土石流)と上層(混濁流)の速度差が大きい混濁流の発達初期には効くものの、混濁流が発達して両層の速度差が小さくなるとサスペンションの生成速度が小さくなるためである。一方、間隙流体の湧き出しによるサスペンションの生成は先頭部以外でも砂の堆積が生じる限り発生するため、後方部で生じたサスペンションが圧力勾配によって先頭部へ送り込まれているためと考えられる。以上のように、混濁流の発達段階に応じて混濁流生成メカニズムの寄与は変化する。そして、より連続的に混濁流の発達過程を考えるためには、従来考慮されていた「土石流表面での堆積物連行作用」に加えて、流れが十分に発達した後に重要となる「間隙流体の湧き出し」作用を考慮する必要があることが本研究の数値実験により示された。